翻訳者のシゴト論 – 第1回 K・Wさん
Profile
K・Wさん
翻訳者としての経験年数:6年
専門分野:金融・契約・ゲーム開発・テクノロジー・ビジネスコミュニケーション
翻訳者になるきっかけを教えてください。
アメリカの大学で経済を専攻していました。卒業後は、フルブライト奨学金を受賞し、愛知大学の国際コミュニケーション学部および経済学部に1年間留学しました。そこでは、主に研究所で翻訳のサポートをしました。学究的な日本語を経験する機会があり、大学の先生に論文の翻訳サポートをお願いされたことが、翻訳を始めるきっかけになりました。
現在は翻訳者としてご活躍されていますが、それまでの経緯を教えていただけますか。
日本での留学経験後、株式会社カプコンに4年間勤務しました。その当時、以前より興味のあったカリフォルニア州の大学院で、翻訳と通訳を同時に学べるビジネスプログラムを専攻しようと思っていました。そこで事前に開かれたパーティーに参加した時に知り合った方に、以前より興味のあったゲーム業界のカプコンを紹介してもらいました。もともとゲーム会社に就職したかったので、大学の卒論もゲームについて書いたほどです。日米で同じゲームを販売した場合の売り上げの違いを分析しました。
入社後は、海外パートナーとのビジネス・コミュニケーションや契約を担当しました。その時に翻訳スキルを磨くことができ、現在、翻訳者としてその不可欠な経験などを常に活用させていただいております。
もし、日本でカプコンに就職していなかったら、何をされていたと思いますか?
もしカプコンに就職していなかったら、カリフォルニア州にある大学院で通訳と翻訳の勉強をしたいと思っていました。現在は、翻訳の仕事と同時に、ゲーム開発の仕事もしています。
翻訳者として英語と向き合う際に、一番難しいと感じることは何ですか?
言葉そのものではなく、文章の意味や意図、筆者の気持ちなどを考慮して、自然に伝わる文章にするのが難しいです。そのために、コミュニケーションを大切にして、相手のことを考え、伝わる英語にするように心がけています。
翻訳者としてのスキルアップ方法や、語学力向上のために欠かさずにやっていることなどがあれば、ぜひ教えてください。
普段は自分が楽しいと感じるものを、日本語で読むことを心がけています。仕事の休憩も兼ねてマンガを読む時などは、キャラクターやストーリーの関係性を考えながら読むようにしています。最近、読んで面白かったのは、「ReLIFE(リライフ)」というマンガです。オンラインで読みました。それ以外に、オンラインゲームで日本人のプレーヤーと日本語で話をして、日本語会話のスキルアップをしています。
契約や金融関係資料などの翻訳をされているようですが、他に得意な分野はありますか?または、今後やってみたい分野はありますか?
最初はあまり面白くないと感じても、どんな分野でも取り掛かっていくうちに、興味が沸いて楽しくなる。今後やってみたい分野は、これまでやったことがないマーケティング関連の翻訳をやってみたいです。
翻訳者としてかかせない、本やサイトなどがありますか。
(1)アルクが運営しているオンライン辞書
(2)Yahoo!知恵袋
(2)実例の参考や用語についての質問の答えを参考にしています。
(3)FirefoxのExtension「理解ちゃん」
(3)ブラウザに表示された単語にマウスオーバーするだけで 翻訳 してくれるので便利です。
(4)Google検索
(4)母国語の英語の使用方法などの実例を調べて判断するのに使用します。
論文を執筆する日本の研究者に、ことばの壁を乗り越えるためのアドバイスがあれば教えてください。
自分の経験が論文を執筆する研究者の方に当てはまるか分かりませんが、とにかく、恥ずかしがらずに勇気を持って英語を話すことが重要だと思います。
大学時代に東京に留学した時、日本語が通じるか不安であまり話せなかった。そういう経験をしたので、帰国後にサマースクールで日本語を受講しました。期間中は、受講したクラスの言語しか話してはいけないというルールがありました。最初は恥ずかしくて話せなかったけれど、勇気を振り絞って話しはじめたら、そのことが自信にも繋がりました。状況は異なりますが、英語を話さないといけない機会を自ら作り、積極的に英語を使っていくことが大切だと思います。
日本人研究者が英語のスキルを伸ばすためにはどのような訓練・教育が必要だと感じていますか? ご自身が翻訳者となるために語学を勉強された経験を交えてお教えください。
自分は読み書きから日本語の習得したので、会話をはじめとしたコミュニケーションに苦手意識がありました。
例えば、日本に留学中、セルフサービスのカフェで注文した時、店員さんに「温めますか?」と聞かれましたが、なぜ、「温めるのか」と聞かれたのか意味が理解できず聞き返しました。後になってスコーンを注文したから、それを「温めるか」と聞いてくれたのだと理解でき、改めて言葉そのものより、その場の状況などを理解したコミュニケーションスキルを磨くことが重要だと感じました。
日本人研究者の方に、論文を書く際に最低限おさえておきたいポイントを2~3つ教えてください。
(1)曖昧さをなくすこと
証拠がなく自信がないことを書く時に、ストレートな表現を避ける傾向があるように思います。以前、日本人の翻訳をサポートした時に、不明瞭な表現を度々目にすることがありました。出来るだけ内容を絞り込んで、自信のあることを明瞭に書くほうが良いと感じました。
(2)読みやすい英語にすること
何とかして「自然で読みやすい英語」にするために、できるだけ多くの人に論文を読んでもらい、サポートを受けることが重要だと思います。
翻訳作業では長時間PCの前に座り続けることになります。身体のために心がけていること、続けていることはありますか?
長い時間座り続けて疲れないためには、机と椅子の高さを適切に調整することが重要です。
また、肩こりがひどいので、友人がプレゼントしてくれた肩たたき用のマッサージ棒(たたく部分にゴルフボールがついているもの)でたたくこともします。
ヨガの先生が勧めてくれた、ヨガ用のマッサージローラーで、肩や足、背中をほぐしたりしています。ネット通販で安価で購入できますよ。