14

盗用・剽窃の8つの種類

論文発表における盗用および剽窃とは、他人の研究に関する考え方や文章を許可なく使用し、自分の著作物・論文の一部として発表することです。残念ながら、盗用・剽窃は、研究において目新しい問題ではありませんが、盗用・剽窃を検出できるソフトなどの出現により見つけ出すことが容易になったため、より注目されるようになりました。

 

盗用・剽窃には偶発的なものから悪質な不正行為まで様々なタイプがあります。意図したものはもちろん、意図しないものも許されませんが、すべての盗用・剽窃が不正行為かどうかと、その重要性を分析する際には、どのような盗用・剽窃なのかの判断が必要です。だからこそ、大学のような教育機関において盗用・剽窃に関する知識を学び、その重要性を知った上で対策を講じることができるようになることが重要です。この記事では、基本的な8種類の盗用・剽窃を紹介します。

盗用・剽窃の種類

盗用・剽窃の問題は昔からありますが、近年は、インターネットが普及したことでこの問題が一層表面化してきました。きちんと引用すれば盗用・剽窃とはみなされないのですが、意図的に行う盗用・剽窃は犯罪です。さまざまな盗用・剽窃の種類と、それらがどのように発生するかを考慮し、研究倫理上も重大な問題であると理解しておくことが非常に重要です。その上で、非倫理的行為を行ったと指摘、非難されるのを避けるための対策を講じなければなりません。

完全な盗用・剽窃

完全な盗用・剽窃とは、他の研究者の研究や原稿を、自分の名前で投稿するという最も悪質なものです。これは、知的財産権侵害に相当します。ネットで見つけたものをコピーする、誰かにお金を払って論文を書いてもらう、自分あるいは他者が何年も前に提出した古い論文を再投稿することなども含まれます。

ソースベースの盗用・剽窃

ソースベースの盗用・剽窃とは、存在しない、あるいは虚偽の出典を参照する行為です。ソースベースの盗用・剽窃は、出典の種類が異なることでも起こりえるので、判断が難しいこともあります。例えば、研究者が誤って、間違った情報源や存在しない情報源を引用した場合、読者に誤解をもたらすことになります。意図的であろうとなかろうと、出典を完全かつ正確に引用していなければ、盗用・剽窃となります。

また、研究者が二次的なデータや情報源を参照したにも関わらず、二次的な情報のなかに示されている一次的な情報源のみを引用して二次的な情報に言及しない場合も、盗用・剽窃に該当することになります。このタイプは、単なる見落としやミスということもありますが、意図的に参考文献リストを補強したり、引用文献の数を増やしたりすることも含まれています。

ソースについてさらに言えば、データの捏造と改ざんも盗用・剽窃の一種類です。データの捏造とはデータや研究結果をでっち上げることであり、データの改ざんとはデータを変更したり省略したりして誤った印象を与えることです。特に医学研究の場合、こうした盗用・剽窃がもたらす結果は、臨床判断に悪影響を及ぼす可能性があるため、重大です。

直接的な盗用・剽窃

完全な盗用・剽窃と似ていますが、直接的な盗用・剽窃とは、コピペ盗用とも呼ばれるように、他人の言葉や文章をそのまま引用符も使わず、発言者の断りも書かずに(帰属表示なしに)一字一句そのままコピーし、自分の創作として利用してしまうことです。二つの違いは、完全な盗用・剽窃が文章全体を使用するのに対し、直接的な盗用・剽窃は他人の作品の一部をコピーペーストすることです。特定の段落や文章をコピーすることもあります。いずれにせよ不正行為とみなされ、勧告や厳しい処分を受けることになります。

自己盗用・自己剽窃

自己盗用・自己剽窃とは、著者が以前に発表した自分自身の論文のかなりの部分を帰属表示なしに再利用する場合に起こる盗用・剽窃の一種です。また、ひとつの論文を複数の学術雑誌(ジャーナル)に投稿する二重投稿も自己剽窃の一種とみなされます。そのため、このタイプの盗用・剽窃は、学生よりもむしろ、出版経験のある研究者がやりがちですが、既に出版されている論文を新しいもののように主張することは、研究倫理的な違反となります。

この違反の重大さは、コピーされた内容によって議論の余地がありますが、多くのジャーナルは、著者の著作物の再利用可能な割合について厳しい基準を設けており、査読を行う前にiThenticateのようなソフトウェアを使用して剽窃チェックを行っています。意図的ではないにせよ、過去に書いた文章と酷似する文章が混入したりするのを避ける意味でも、投稿前に自分の論文をツールでチェックしてみると良いでしょう。

引用元を表記しない言い換え(パラフレーズ)

言い換え(パラフレーズ)とは、他人の文章を少し変えて自分の文章として使用することで、最も一般的な盗用・剽窃です。言い換えが盗用・剽窃と見なされることは見落とされがちですが、言葉を変えても、元の文章は他者のものなので、帰属を示さずに自分のものであるかのように発表することは、盗用・剽窃となります。

 

パラフレーズを行う際は、意図しない盗用や剽窃とみなされないためにも、ジャーナルのガイドラインやアカデミックライティングに関する推奨事項を参照しましょう。他者の文章を、引用元を明記しないまま言い換えて発表することは不正行為となるばかりか、既知のことを繰り返すだけでは独創性のある研究を行っているとは言えず、学術的な発展に貢献していないことになります。

不適切なオーサーシップ

学術論文では研究倫理に基づき、論文著者や共著者、実験やデータ分析などの研究作業にかかわった人(オーサーシップ)を記載する必要があります。オーサーシップを主張するには、従事した研究に虚偽や不正がなく、質の良い研究であることを保証する点で責任が伴うので、論文の執筆に寄与した著者のリストが不完全であれば、不適切なオーサーシップと見られることになります。

研究に貢献した著者の名前が記されない(ゴースト・オーサーシップ)ことや、逆に全く貢献していないのに著者としてリストされる(ギフト・オーサーシップ)こともこれに該当します。共同研究であるにも関わらず、共同研究者に言及せずに発表することも研究倫理に反します。また、著者の利益相反を明示することも大切です。

第三者が原稿を編集し、実質的な変更につながった場合には、そのことを提示しないことが違反となる可能性もあります。この場合、著者として記載せずとも、出版時に謝辞(Acknowledgement)を述べることが推奨されます。

どのような形であれ、研究に直接的に関連した著者、あるいは間接的な関係者については適切に帰属を示し、オーナーシップについても適切な処置をすることが求められています。この種類の盗用・剽窃を避けるためには、投稿先ジャーナルのオーサーシップに関する規定などを確認しておくようにしましょう。

モザイク盗用・剽窃

モザイク盗用・剽窃とは、自分の研究の中にさまざまなソースから集めた他人の言い回しや文章などを組み合わせて挿入し、自分の文章として提示することです。パッチワーク剽窃と呼ばれることもあります。発見は難しいと思われがちですが、盗用・剽窃チェックツールはこのタイプの盗用・剽窃も検出できるようになっており、意図的で不正な盗用・剽窃と見なされます。

偶発的な(意図しない)盗用・剽窃

偶発的、あるいは偶然の、意図せずに発生する盗用・剽窃には、ガイドラインの確認を怠った(怠慢)、ガイドラインが理解できていなかった(理解不足)、情報源の引用記載を忘れた、または参照した二次ソースに一次ソースのことを書き忘れた(単純なミス)などさまざまな原因が考えられますが、意図的であろうとなかろうと、盗用・剽窃に弁解の余地はなく、その結果、深刻な影響を及ぼすことがないとは言えません。学生や若手研究者は偶発的な盗用・剽窃をしてしまう可能性が高いので、大学などの教育機関がこの種類の盗用・剽窃に関する指導を行うことが重要です。

これらの盗用・剽窃の種類は、研究活動においてよく見られるものです。iThenticateがどのタイプの盗用・剽窃がよく起こっているか、意図的と不注意の傾向を分かりやすく示すインフォグラフィックを公開している(2022年)ので、こうしたものも参考にしてみることもお勧めします。盗用・剽窃を意図して行ったか偶発的かに関わらず、これらはすべて不正行為とみなされ、処分の対象となりますが、いずれの場合もきちんと引用を行えば盗用・剽窃とはみなされません。

盗用・剽窃を避けるための注意

  • 他者の考えや文章を使用するとしてもコピーはしない
  • 適切な引用を行い(直接引用なら引用符を使用)、参考文献を示す
  • 情報ソースを参照するときには、注意して出典を記録し、できるだけ複数の参考文献を使用するように心がける
  • 盗用・剽窃チェッカーを使用する

学術研究においては、文章だけでなく研究のオリジナリティについても盗用ではないことが大切です。適切な対策を講じれば、盗用・剽窃を避けることができます。盗用・剽窃を検出するツール(盗用・剽窃チェック)の中にはオンラインで気軽に利用できるものもあるので、是非使ってみてください。

参考ソース

https://www.citationmachine.net/resources/plagiarism/plagiarism-types/

https://www.lab.toho-u.ac.jp/univ/edu-support/support/iThenticate/s1toci000000035s-att/iThenticate_infographic.pdf 

こんな記事もどうぞ

研究支援エナゴ:研究における剽窃を回避するためのクイックガイド
https://www.enago.jp/knowledge-base/avoiding-plagiarism-in-research-quick-guide 
エナゴ学術英語アカデミー:研究者におすすめの盗用・剽窃チェッカー4選
https://www.enago.jp/academy/4-best-plagiarism-checker-tool/ 

X

今すぐメールニュースに登録して無制限のアクセスを

エナゴ学術英語アカデミーのコンテンツに無制限でアクセスできます。

  • ブログ 560記事以上
  • オンラインセミナー 50講座以上
  • インフォグラフィック 50以上
  • Q&Aフォーラム
  • eBook 10タイトル以上
  • 使えて便利なチェックリスト 10以上

* ご入力いただくメールアドレスは個人情報保護方針に則り厳重に取り扱い、お客様の同意がない限り第三者に開示いたしません。

研究者の投票に参加する

研究・論文執筆におけるAIツールの使用について、大学はどのようなスタンスをとるべきだと考えますか?