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人目を引きつける論文ステートメントの書き方

論文ステートメントとは

論文ステートメント (Thesis Statement)とは、エッセイや研究論文の主旨となるアイデアを端的に伝える文章です。著者の考え、あるいは調査研究において主張しようとしていることについて記すものですので、1-2文程度で明確かつ簡潔に書きます。

論文ステートメント-論文執筆において極めて重要なもの

繰り返しになりますが、論文ステートメントは、研究論文のアイデアを1文もしくは2文にまとめて記し、論文の内容を整理し、研究の論点や意見を発展させるためのものです。論文にどのようなことが書かれているか、著者が研究課題にどのように取り組んでいるかを読者に伝えるためにも重要です。さらに、論文の構成の指針となり、著者が自分の考えをより効率的にたどったり、整理したりするのに役立ちます。

論文ステートメントは、複雑で方向性の見えない議論において著者が状況を見失わないようにするのを助けると共に、研究論文が問題に直結し、研究目的に焦点を合わせた内容となることを確保するものです。

論文ステートメントはどこに書くのか

通常、論文ステートメントは、エッセイあるいは研究論文のイントロダクションの終わりに書きます。研究テーマに関する著者の意見を一文で示すことで、読者に向けた論文全体の具体的なガイドと位置づけられます。

影響力のある論文ステートメントを書くための6つのステップ

ステップ1:研究論文を分析する

研究論文に関連する領域でまだ明らかにされていないナレッジ・ギャップ(knowledge gap)を特定し、著者が示す論点のより深い含意を分析します。論文ステートメントで言及した研究目的は、考察(Discussion)または結論(Conclusion)で覆されていませんか? 著者自身の考えに矛盾はありませんか? 研究目的を定める際、重要なナレッジ・ギャップはありましたか? 著者は、基本的な理論を正しく理解し、実証しましたか? 著者は、裏付けとなる文献の引用なしに議論の裏付けをしていませんか? こうした問いかけで自問自答してみることは、実用的な論文を作成し、苦労することなく方向付けを行ない、構造を組み立てることに役立ちます。

ステップ2:質問を考える

論文を作成しているとき、執筆プロセスの早い段階で、取り組むべきリサーチクエスチョンが見つかっているかもしれません。研究課題の中に、すでに確固たるリサーチクエスチョンがあれば、それが研究デザインの指針となり、特定の目的を定義・特定することができるでしょう。こうした目的は、著者が論文ステートメントを構成するのに役立ちます。

ステップ3:答えを作成する

初期研究を行なった後、リサーチクエスチョンに対する暫定的な答えを作成します。この段階での質問に対する答えは、研究と執筆プロセスのガイドとするのに十分なシンプルなものでしょう。答えを書いてみた後に、なぜこの答えを選んだのかについてさらに詳しく述べることができます。研究テーマについてもっと読み込んだ後、リサーチクエスチョンに応じた答えを書き、それを洗練していけば良いのです。

ステップ4:論文ステートメントの初稿を書いてみる

論文ステートメントの観念化ができたら、書き出してみましょう。素晴らしいアイデアが浮かんだのに、集中力が切れて忘れてしまってガッカリとなっては元も子もありません。しっかり書き留めておきましょう。初稿は、明確かつ論理的に考えるのに役立つはずです。書き出しておけば、設定した研究目的に論文ステートメントを合わせて調整するための選択肢となるでしょう。

ステップ5:ステートメントに対する反論を想定してみる

論文ステートメントを作案した後、そのステートメントに対してどのような意見が出るか想定しておく必要があります。論点をリストにまとめておけば、後々で論文に意義を唱えるのにも役立ちます。どのような議論でも反論が出ることを念頭に入れておきます。もし、論点に対して何の反論も出ないのであれば、議論になりません。その場合、あなたの発言は真実、あるいは意見であるとしても、議論は成り立たないことになります。

ステップ6:論文ステートメントを洗練させる

反論を想定することは、ステートメントを一層洗練させることにつながります。強固な論文ステートメントにするには、以下のような点を盛り込んでおく必要があります。

  1. 研究がその位置にある理由
  2. 読者はエッセイ/論文ステートメントから何を学ぶことができるか
  3. 議論またはナラティブの要点は何か
  4. 最終的な論文ステートメントは、全体的な議論をまとめたものになっているか、あるいは研究論文で説明を試みているテーマ全体を要約するものになっているか

説得力のある論文ステートメントを作成するための5つのポイント

論文ステートメントは、あらゆる学術論文にとって重要な役割を担うものです。研究の主要なアイデアを明確に延べることは、研究論文の目的に重点的に取り組むことに役立ちます。論文ステートメントを書くときには、以下の5つのポイントに注意してみてください。

1. 簡潔に書く
論文ステートメントは短く、かつ正確に書き、数文以内に収める。

2. 具体的に書く
特定のテーマあるいは論点に焦点を当てる。取り上げるテーマが多すぎると、論文全体のまとまりが悪くなるので注意する。

3. 意見を表明する
問題または論争に関連する意見を含めて書くことにより、議論の余地のある、興味深い論文にすることができる。

4. 断定的に書く
ためらいがちに、あるいは申し訳なさそうに書くのではなく、断定的に書く。議論を投げかけていることを忘れずに、説得力のある書き方をする。

5. 論拠を示す
論文ステートメントは、論文のエビデンスに裏付けられている必要がある。研究で得られた具体的な例を含めておくことで、研究目的を補強する。

論文ステートメントの例文

論文ステートメントの例文を挙げておきますので、参考にしてください。

例1:アルコール消費量
多量のアルコール摂取は、個々人の健康に対し、体重増加、心臓病、肝臓の合併症といった有害な影響を及ぼす。
この論文ステートメントでは、アルコール摂取は有害であるとの具体的な理由を示す。論文で言及するすべての有害事象について個々に記すものではない。
例2:インターネットの利点
インターネットは、世界中の人々をつなぐ便利な手段であり、新たな友情を育み、インターネットが普及する前には起こり得なかったアイデアの交換を促している。
インターネットの数ある利点の中で、この論文ステートメントは、新しい友情を育み、アイデアを交換する点に絞っている。この研究では、インターネットの普及以前には、世界中の人々がどのようにつながることができなかったかを証明する必要がある。この研究論文ステートメントは、この点に焦点を置いたものである。

※以下の論文ステートメントは、完全に実施された研究から取ったものではなく、論文ステートメントの書き方を理解してもらうために作成された例文です。これらのステートメントの例文を自身の研究論文の目的には使用しないでください。

まとめ

魅力的な論文ステートメントは、読者の目線から論文を理解しようとすることで作成することができます。自分だけが興味を持っている、読者の関心が低いテーマを広げないように注意してください。厳しい言い方をすれば、「読者が自分の論文を読むべき理由は何か」を自問自答してみることが必要なのです。自分の論文に読む価値はあるか。自分で書いたものではないとしたとき、自分はこの論文を読むか。考えてみてください。

言うなれば、論文ステートメントは研究論文の顔です。論文ステートメントが良く書けていれば、読者はどのような具体的な情報が論文に書かれているのか知りたいと思うでしょう。それは、読者が新しい事実を学ぶと共に、新しい意見を取り入れることにつながるのです。

論文ステートメントを書く事は、2文程度の短い文章であっても、難しく思う人もいるでしょう。まず、具体的な研究課題を選び、質問を考え、議論を通して先に挙げた質問に対する回答を考えていく-段階的に進める必要があります。そして、そこで主張する内容が証明に裏付けられている必要があることも忘れないでください。

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