研究の領域(scope)と限界(limitations)の陰陽関係

図書館やインターネットで、研究論文の書き方を調べてみると、「研究の領域(scope)と限界(limitations)を明確に提示しましょう」というアドバイスが見つかることがあります。いかにも当たり前なことだと簡単に読み流してしまいがちですが、実際に論文を書き始めると、話が「領域」と「限界」の間を行ったり来たりしてしまい、簡潔に書くのは意外と難しいことがわかります。このようなときには、まずはそれぞれの言葉の意味を思い出してください。
研究の「領域」とは、研究対象(研究の目的や被験者の選抜条件など)が何かを意味します。たとえば、「男児、3歳から5歳の脆弱X症候群と精神発達障害の関係」といった記述がそれに当たります。これに対して、研究の「限界」とは、自分が行った研究方法では知ることができないことを意味します。たとえば、「同様に脆弱X症候群を患う女児は研究対象に含まれない」といった記述がそれに当たるでしょう。つまり、「領域」と「限界」は陰陽の関係にあるといえるのです。
この2点が明確に、そして簡潔に書かれていない論文は、読者にとってわかりいくいと思われるだけでなく、読者を騙しているような印象を与えかねません。もちろんジャーナルの編集者や査読者の評価も悪くなります。


それを避けるためには、論文を書くときには以下の2点に注意し、論文は自分の研究の「広告塔」だと思って書いてください。
1. 初心に戻る
論文を書き始めるとき、研究者の頭の中は、分析方法の正確さやその結果の解釈などでいっぱいです。そのため、研究当初から考えつくしてきた領域や限界のこととなると、自明のこととしてササっと簡単に書いてしまいがちです。「本文を読めばわかる」といった安易な考えは捨てて、読者が必要とする情報がすべて含まれているかを何度も確認しましょう。
2. 切り離して書く
領域と限界が陰陽の関係にあると延べましたが、この2つはできるだけ切り離して書くように心がけましょう。基本的な順序としては、まず研究の領域を提示し、その意義を説き、その後で限界を認め、その対策を提言する、ということになります。研究を知り尽くした研究者の視点で考えると、「男児は対象だが女児は対象外。それは…」というように、領域と限界を並列して書いたほうが、問題点を比較しやすいような気もするかもしれません。しかしながら、研究の全体像を知らない読者にとっては、正誤の情報が行き当たりばったり提示されているという印象を抱きかねません。ご注意ください。

優秀な研究者になるための10の資質

科学研究は、何世紀もの間、技術革新の最前線にあり、私たちを取り巻く世界の理解を前進させ、生活を変える多くの先駆的発見への道を切り開いてきました。そんな科学の発展の一翼を担う研究者として成功するには何が必要なのでしょうか。単に知力と技術的なスキルがあれば良いのか、それともそれ以上の何かが必要なのでしょうか。

優秀な研究者と聞くと、研究室に閉じこもって顕微鏡をのぞきこみ、ひたすらデータに目を通したりする天才肌の人物がステレオタイプ的なイメージかもしれません。しかし実際に優秀な研究者になるためには、実際の研究に必要な知力と技術力だけでは十分とは言えません。専門知識や学歴は確かに重要ですが、他にも科学研究の分野で成功するために不可欠な資質が多数あります。これらの資質を養うには、生涯にわたる意識的な努力と献身を必要とします。この記事では、高い業績を上げる優れた研究者となるために不可欠な資質を10のポイントにしぼって掘り下げてみます。

批判的な考え方から創造性、情熱を注ぎ続ける根気といった幅広い資質を有する研究者こそが、それぞれの分野で秀でた業績を成し、世界に長期的な影響を与えることができるのです。科学的な研究における自分の潜在能力を最大限に引き出す極意を見つけてください。

優れた研究者の資質

研究分野のトップ研究者になりたいと願っているのであれば、内に秘めた類まれな能力と、他者と大きく差をつけるための10の本質的な資質を解き放ちましょう。以下に優秀な研究者に必要とされる10の資質をひとつずつ概説していきます。

1.情熱(研究への熱意)

“Science is not only a discipline of reason, but also of romance and passion.”
– Stephen Hawking

科学は理性の学問であると同時に、ロマンと情熱の学問でもある。-スティーブン・ホーキング博士(イギリスの理論物理学者)

研究者は自分の研究に情熱を持って取り組む必要があります。研究者は、各自の研究分野に変化をもたらし、より大きな利益に貢献したいという願望に突き動かされています。特定のテーマに心から興味を持っていれば、大きな発展を遂げるために必要な時間と努力を惜しげなくつぎ込むでしょう。

2.好奇心

“Millions saw the apple fall, but Newton was the one who asked why.”
– Bernard Baruch

何百万人もの人がリンゴが落ちるのを見たが、なぜなのかと問うたのはニュートンだけだった。

– バーナード・バルーク(アメリカの投機家・政治家)

高い業績を上げる研究者は、飽くなき好奇心を持っています。好奇心こそが、疑問を投げかけ、答えを求め、新しいアイデアを探求し、既存の限界を押し上げる原動力となるのです。好奇心があるからこそ、ひとつの研究テーマに深く潜り込み、真に画期的なものを発見するまで探求し続けるとともに、複数の可能性を検討し、潜在的な解決策を創造的に考えることもできるのです。これは、イノベーションが必要とされる分野や、斬新なアプローチを必要とする複雑な問題がある分野では、特に重要な資質です。好奇心とは、研究への情熱に火をつけることができるものなのです。

3.忍耐力

“Talent is quite common; it is not intelligence that is scarce, but perseverance.”
– Doris Lessing

才能とはごくありふれたものである。不足しているのは知性ではなく、忍耐力なのだ。- ドリス・レッシング(英国の女流作家)

研究者は、忍耐力、つまり挫折や障害に直面してもやり続ける気概と決意を持っている必要があります。実験結果が期待されたように出ないこともあれば、さらには、ほとんど成功と言えるほど順調に進んでいた実験が失敗に終わることもあります。研究は長く困難なプロセスなので、あきらめてしまっては高い業績を上げることはできません。原稿がボツになろうが、ストレスの多い博士課程での作業に追われようが、情熱と何かを見いだしたいという願望があれば、それらに突き動かされながら前に向かって進み続けることができるのです。

4.批判的思考

“Nothing in life is to be feared. It is only to be understood.”
– Marie Curie

人生において恐れるべきものは何もありません。ただ理解すべきことのみです。- マリー・キュリー(フランスの物理学者・化学者)

優れた研究者のもう一つの重要な資質は、批判的思考です。研究者は、データを分析し、パターンを特定し、証拠に基づいて結論を導き出すことに長けていなければなりません。細部に鋭い目を注ぎ、自分の研究の矛盾や誤りを見抜けなければならないのです。成功する研究者は、さまざまな角度から問題にアプローチする能力を有している必要があります。複雑なデータを分析し、その結果から意味のある結論を導き出すことができなければなりません。

5.コラボレーション(協業・協力)

“The hardest problems of pure and applied science can only be solved by the open collaboration of the worldwide scientific community.”
– Kenneth G Wilson

純粋科学と応用科学の最も困難な問題は、世界中の科学者コミュニティのオープンな協力によってのみ解決することができる。- ケネス・G・ウィルソン(アメリカの物理学者)

研究とは孤独に追求するものではありません。時には、チームを組んで行う必要があるため、研究者は他の研究者と協業して効果的に作業を進める方法を心得ている必要があります。自分の考えを明確に伝え、自ら進んで同僚から意見やフィードバックをもらいましょう。チームワークは、多様な視点、スキル、リソースを結集して研究課題に取り組むことを可能にし、専門家としてのネットワークを育み、課題を克服し、知識やアイデアの共有を促進します。研究がますます分野をまたぐようになってきている中、効率的に共同研究を進めるスキルは、研究の成功を助ける重要な要素であると言えます。

6.効果的なコミュニケーション

“You don’t really understand something unless you can explain it to your grandmother.”
– Albert Einstein

あなたの祖母にそれを説明できない限り、何かを本当に理解したとは言えない。- アルバート・アインシュタイン(ドイツ生まれの理論物理学者)

研究者として成功するには、自分の研究成果を幅広い人に効果的に伝えることができなければなりません。同僚の科学者であれ、一般の人々であれ、対象が誰であっても複雑な概念を明確かつ簡潔に説明できなければならないのです。要約を書くにせよ、学会で発表するにせよ、研究資金を得るために説得力のある助成金申請書を書くにせよ、すべての研究者にとって伝える力、コミュニケーション・スキルは不可欠です。自分の研究成果を効果的に伝えることができれば、研究を広め、その分野に大きな影響を与えることができるでしょう。

7.組織力(時間、エネルギー、リソースなどを効果的に使用する能力)

“A goal properly set is halfway reached.”
– Zig Ziglar

適切に設定された目標は、半分達成したようなものだ – ジグ・ジグラー(アメリカの自己啓発作家・講演家)

研究ノート、データ、文献レビューなどを整理する戦略を立てることで、後にデータを分析し、統合することが容易になります。もちろん、優秀な研究者であるためには、時間管理能力の有能さも求められます。さらに、チームで仕事をする場合、誰がどの仕事を担当し、どのような期限があり、それぞれの仕事の進捗状況がどうなっているのかを把握しておくことも重要です。また、自分のためだけでなく、家族や友人との時間を確保することも大切です。ワークライフバランスを保つことは、研究者にとって精神的にも身体的にも良い状態を保つためにとても重要なことです。優れた組織力(Organization skill)は、研究者が常に仕事を把握し、時間を効果的に管理し、他の人とうまく協力するのに役立ちます。

8.慎重さ

“Prudence is a presumption of the future, contracted from the experience of time past.”
– Thomas Hobbes

慎重さとは、過去の経験から引き出された、未来の推定である- トマス・ホッブズ(イングランドの哲学者・政治学者)

慎重さは、優れた研究者の重要な特性だと言えます。というのも、研究者は、時間、資金、材料などのリソースを効果的に管理する上で、適切な判断力と慎重さを発揮する必要があるからです。野心と慎重さの間で適切なバランスを取ることが必要であり、そのためには通常、時間と経験を要します。研究者は多くの場合、限られたリソースしか持ち合わせていないので、研究目標を達成するためにはリソースをどのように配分するかについて戦略的な決断を下さなければなりません。慎重に物事を進めることができれば、研究を最大限の効率と効果で実施できるように、リスクを計画・評価するための意図的な手段を講じることができるようになるでしょう。

9.自立

“Without your involvement you can’t succeed. With your involvement you can’t fail.”
– A.P.J. Abdul Kalam

あなたの関与なくして成功はない。あなたの関与があれば、失敗することはない。- A.P.J.(インドの政治家、科学者、技術者)

自立することにより、研究者は独立して自分の研究を行い、自らの研究を自分で進めることができるようになります。研究の成功を他人に依存することなく、自分の研究を自分のものとして進めることができるのです。自立することで、研究者は自分で決断し、自分で問題を解決することができるため、より効率的で効果的な研究ができるようになります。とはいえ、孤立をすすめているわけではありません。仲間や同僚との協力やコミュニケーションが、研究において重要であることに変わりはありません。端的に言えば自立とは、研究者が必要なときに独立して作業を進め、重要な決断を自らで下す自信と能力を持っていることを意味します。

10.倫理的行動

“Ethics and Science need to shake hands.”
– Richard Cabot

倫理と科学は手を取り合う必要がある- リチャード・キャボット(アメリカ人医師)

研究には最も高度なレベルの倫理と誠実さが求められます。誠実さ、正直さ、被験者や参加者への敬意をもって研究が行われることを保証する倫理的な行動をとることは、優れた研究者の重要な資質です。厳格な倫理指針を遵守し、誠実さと透明性をもって研究を行わなければなりません。さらに、倫理的行動には、研究の限界について正直であること、結果に影響を与える可能性のある利益相反や偏見を認めることも含まれます。

最後にまとめると、優れた研究者になるには、ここに挙げた10の資質、スキル、経験のすべてをバランス良く有している必要があります。自然に身につくものもあれば、訓練やトレーニング、経験を通じて身につくものもあります。こうした資質を培い、常に向上しようと努力することで、一流の研究者となり、自分の研究分野における有効性、生産性、さらには影響力を向上させることができるでしょう。

本記事同様に、研究者として成功するためのヒントをまとめた論文(エルゼビアの学術ジャーナル『Gastroenterología y Hepatología』に掲載)も参考にしてみてください。

Gisbert JP, Chaparro M. Tips and guidelines for being a successful researcher. Gastroenterol Hepatol. 2020;43:540–550. doi: 1016/j.gastre.2020.03.007

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後輩指導は博士課程の学生にとって有益か?!

自分の研究を管理するだけでも大変なのに、学部生の指導を行うように言われたことはありませんか?指導方法なんて分からないのに、研究責任者(PI: Principal Investigator)から、学部生の指導を引き受けるように言われたら、どうしますか。確かに大変な役割ではありますが、博士課程(PhD課程)の間に後輩の指導(教育指導)を経験することは、自分自身の知識を広げ、研究に関する目標を学部生と共有し、学部生の研究の対象分野への好奇心をそそるには絶好の機会とも言えます。

もちろん、後輩を指導することは容易ではありません。特に、指導経験がない場合、研究者にとって難しいものになる可能性は捨てきれないでしょう。ただ、博士課程のどの時点で後輩学生の指導を行うか、どのような教育指導を行うか、何名の学生を受け持つのかなどは大学や学部によっても異なるようですし、博士課程になったからといってすぐに教育指導を任されるのではないようです。教育経験を積むために、自主的に教育の機会を持つ研究者もいます。STEM(科学・技術・高額・数学)分野で研究を行う研究者の場合、指導責任には、実験室での講義、例えば、学部生と修士課程学生のために科学的方法と技術の実地説明(デモンストレーション)を行うこと、管理業務、セミナーの開催、そして評価などが含まれるなど、指導内容もそれぞれです。

PhD課程における教育指導の内容

ここでは、PhD課程における教育指導の一例をあげてみます。

教育指導には、実際の教室での授業、学業に関する助言、学生の相談対応、各学部関連の業務、評価を踏まえた履修内容(カリキュラム)の開発、進行中の研究を探究するための学会参加、学部生・大学院生向けセミナーへの参加とそれらへのフィードバック、応用的な研究や学術活動、などといったことが含まれます。教員指導者は、学術方針を順守し、評価データの収集や割り振られた業務に積極的に関与することも期待されています。

大抵の博士課程の学生は、時間を取られる教育指導に関わるのを嫌がるものです。研究者は自分の研究活動に専念したいので、余計な責任を負うのを避けたいと思っています。しかし、博士課程で教育指導に従事することは、研究者としても有益な経験となり得るのです。

PhD課程での教育指導がどう有益なのかを挙げてみます。

1. プレゼンテーション能力を高めることができる
2. 研究テーマに関する知識を磨くことにつながる
3. 研究者自身の研究に関する知識を伝える機会となる
4. 学生からの質問に応える力を高める

教育指導に必要なスキルと得られるスキル

学部生に対する教育指導を行うには、授業計画の作成から、学生の指導、学生の相談対応(カウンセリング)のための事務職員との協力まで、さまざまなスキルが必要とされます。研究者が、学術成果の出版、助成金の獲得、そして影響力の提示によって自らの研究の評価を高めるのに励む間、 (しばしば軽視されはするものの) 教育に関連する活動に従事することは研究者としての成長を示す効果的な方法のひとつと言えます。

学生への教育指導では、効果的な対話(コミュニケーション)力、指導力、さらに適応・洗練するスキルに関する自己の振り返り(自省)、教育指導と研究を両立させる時間管理など多面的なスキルを培います。とはいえ、研究者は自主的な研究を行い、自己管理することに追われているので、こうしたスキルを磨くことが難しい状況にいます。

PhD課程の学生が教育スキルを高める方法

次に、教育指導を行うことで教育スキルを高めるには、どうすれば良いかを挙げておきます。

1. 講義には、研究に関連する題材を選ぶ

研究者は学生の質問に答える必要があります。講義を受け持つ場合に自分が専門とする題材を講義で取り上げることは、効果的な授業計画の準備をするのに役立つだけでなく、学生からの質問に対して的確に回答することにも有用です。

2. 教え方を学ぶ

これまで一度も講義をしたことのない研究者にとって、初めての講義は荷が重く感じられるかもしれません。教え方に関するワークショップに参加することで不安を軽減し、教えることへの自信を高めることができます。何事にも初めてはあるものです。教え方を学び、講義を成功させましょう。

3. 講義の双方向性を保つ

講義の題材について学生が自分の考えを発言しようとしたら、どんなときも耳を傾けます。学生が始めた論議に研究を巡る話や実体験を織り込んでいくことができるはずです。さらに、発言を認めることによって、新しい題材を学ぶことに自分たちも対等に関わっている、と学生に感じさせることができるでしょう。研究に関する専門的な経験を学生と共有してください。理論的な知識が実際にどう機能するかについて学生たちが知見を得るのに役立ちます。

4. 同僚から学び、フィードバック(意見)に対応する

PhD課程の学生が教育指導に関するスキルを学ぶのに最良の方法は、指導教員、同僚、他の部署の職員などがそれぞれの職務でどのような役割を果たしているかを注意して見てみることです。そうすることで、別の教育的技術を学び、学生を研究に引き込む新しい方法を知るのに役立つでしょう。さらに、指導教員や同僚からのフィードバックは、教育指導と教育技術について別の視点を得るのに役立ちます。

5. 作業を両立させる

PhD課程の学生が教育指導を行う場合、研究と教育の2つをどう両立させるかが重要です。教育指導は、自らの研究目標に取り組むこととは異なります。研究はもっと独立したもので、議論する必要があるのは指導教員のみです。一方、教育指導は、コミュニケーション能力と効果的なやり取りなしには成り立ちません。研究者が研究と教育指導をどのように両立させていくかは非常に重要です。
研究者は、研究プロジェクトからの経験を共有しつつ、教育指導を通してプレゼンテーションスキルを身に付けていくことができるでしょう。

6. 学び続ける

もうひとつ付け加えておくと、教育技術に準じ、適宜改良し、PhD課程での研究活動と教育指導の両立に慣れたとしても、時には、失望したり、ストレスを感じたり、素晴らしい授業計画を立てようと苦労することはあることでしょう。しかし、粘り強く目標の達成を目指すことが、優れた研究指導員になる鍵なのです。

教育指導を行う際に気をつけること

「詐欺師症候群(インポスター症候群)」に注意

「詐欺師症候群(インポスター症候群)」とは、自分には能力がないと思い込むことや、自信がなくて不安になること、研究に必要とされる充分な知識を持っていないと思い込むことなど、自己肯定感が低いことに起因する心理状態です。若手研究者はこの症候群に陥りがちですが、自分は学部生を教えるのに充分な専門知識を持っている、と信じて克服することが大切です。

準備は入念に

最初は、授業計画の作成と入念な下調べに多くの労力を使いたいと思うでしょう。初めて教育指導を行うPhD課程の学生にとって、しっかりと準備しておくことはプラスになります。準備が過ぎるということはありませんし、しっかり準備しておけば学生からの質問に答えるのに役立ちます。ただし、学生に対して専門用語を使いすぎないように注意しましょう。

いきなり複雑な概念に飛ばない

講義で、基本的な概念の説明抜きにいきなり複雑な概念を話してしまうと、学部生は理解できないかもしれません。研究者が新たな授業を受け持った場合は、学生に改めて基本的な概念を説明する必要があります。この作業は、研究者自身とPhD課程の研究にとってもためになります。

不正確な情報や誤った情報を学生に伝えない

教育指導には、徹底した準備が必要です。それにより、正しい情報を伝えることができます。学生の質問に研究者が答えられないということがあるかもしれませんが、そのような時には的外れな答えをしたり、誤った情報を学生に伝えたりせずに、答えられないと正直に言うようにします。

初めて教育指導を行う際には、それまでに直面しなかったさまざまな問題に直面するかもしれませんが、そうした経験はPhD課程の学生のキャリア育成において多大な影響を及ぼすものです。確かに両立させるには覚悟も準備も必要ですが、教育指導は博士課程の学生にとって有益と考えて挑戦してみてください。


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