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博士課程をスムーズに修了させるための研究計画の作成

博士課程に入るのは簡単なことではありませんが、その後、博士号を取得するまでにもさまざまな困難に直面するでしょう。この記事は、博士課程での研究をスムーズに完了させるための研究計画(タイムスケジュール)の作成についてのアドバイスです。

博士号取得までの研究計画の作成はなぜ必要か

博士号を取得するまでの過程には、いくつかの節目があります。論文の提出、発表(プレゼンテーション)、審査、viva voce(口頭試問)といった節目を事前に確認し、それに向けて研究計画を作成しておけば、期限に追われて慌てることを避けられます。研究計画を作成し、それを着実に実行していくことができれば、研究者として成長し、自己管理力を身に付けることにもつながるでしょう。

研究計画の作成前に確認すること

しっかりした研究計画を作成する際には、次の項目を確認しておく必要があります。

1. 博士課程において重要な段階(節目)
2. 取り組むべき作業
3. 専門的な要件
4. 関連する障害(リスク)

研究計画を作成するための準備

博士号を取得するまでには、必修単位を履修することから、大学によっては博士論文提出資格試験に合格し、さらに論文を執筆後に口頭試問を受けることも必須とされます。博士号取得にどのような要件が付いているかを確認し、それらを踏まえた研究計画を作成することが重要です。以下に準備すべきことを書きだしておきます。

  1. 所属大学のプログラムオリエンテーション/ガイダンスに出席し、具体的な修了要件を確認する。国、大学(大学院)、学部などによっても異なるのでしっかりと確認しておく。
  2. 学会(カンフェレンス)や審査会への参加、口頭試問、プレゼンテーション、資格取得などの専門的な要件をリスト化する。
  3. 博士号取得までのスケジュールを学期単位または月単位で管理する。
  4. スケジュールに優先順位を付け、リストにしておく。

研究計画で抑えておくべき項目

どの大学も博士号取得のために厳格な要件を設けていますが、大学や学部によって研究指導プロセスには違いがあるので、所属の大学の指導プロセスを確認しておく必要があります。大学や学部、学科によっては研究指導計画プロセスを公開しているので全体の行程を見ておくとよいでしょう。
ここでは、例として8つの主要な項目を書きだしておきます。なお、博士課程の学生として最小限の単位を履修するよう学科条件が付くこともありますが、博士課程を履修するのに修士号の取得が要件となっている場合には、追加の単位を取らなくても研究コースの履修のみで博士号を取得することができることもあります。まずは、博士号取得の要件を確認するところから始めます。

博士課程の主要な8つの項目

  1. 要件確認:指導教官に相談し、所属大学院の博士課程の修了要件(修了する必要がある科目、学外や学部外での特別プログラムへの参加など)があるかを確認します。
  2. 研究計画の作成:指導教員または委員会からの助言を受けつつ、修了要件を満たすための研究計画書を作成します。
  3. 求められる試験の受験:アメリカの博士課程では「博士課程研究基礎力試験(Qualifying Examination)」と呼ばれる総合的な試験が広く行われており、これに合格する必要があります。この試験は6名から7名の教授の前で口述プレゼンテーションを行い、学生が研究を行うために必要な知識や能力を修得しているかを審査するもので、これに合格すると博士号取得の見込みがあると認められ、以後は博士候補者(PhD candidate)と称されることになります。日本では「博士論文研究基礎力審査」の合格を要件とする大学もあれば、別の要件を定めている大学もあるので、段階1で確認した要件を該当時期に合わせて消化していくようにします。
  4. 学術的要件の充足:博士論文のテーマや内容に関する発表(プレゼンテーション)、カンフェレンスや学会などへの出席、または学術雑誌(ジャーナル)への論文投稿などを通して研究を深めるとともに、研究の成果が認められるようにします。論文投稿については、査読付ジャーナルに論文が掲載される、もしくは採録と同等とみなされることなど、博士課程で求められる学術成果の修得と要件の充足を図ります。
  5. 論文審査手続:履修要件などが満たせたら、博士論文の提出期限を指導教官と相談して決め、博士論文審査依頼など、博士論文の審査に関する手続きを行います。
  6. 口頭試問の準備:viva(口頭試問)を受けるうえでの必要条件として、完成した論文について指導教官と話し合うとともに、研究内容および論文が博士号取得に該当するかを判断する学位審査委員会の設置を申請します。
  7. 審査:外部大学院の教員あるいは同等以上の研究に関する知識を有する研究者を含めた委員が博士論文の価値、論理、成果を審査します。これに承認されると次は公聴会(thesis defense /thesis progress) による審査が行われます。公聴会では質疑応答も行われ、公聴会での審査に合格し、研究委員会で承認されれば最終合否判定の申請ができるようになります。
  8. 博士論文提出:公聴会の審査結果が承認されていることを確認した上で、最終論文を提出します。締切日までに提出するように注意しましょう。博士論文の提出が確認・報告されれば学位を授与されて卒業することができます。

博士課程における研究計画を図式化しておくと分りやすいかもしれません。

博士号取得までに如何に苦労したかという話を聞いても意欲を失わないでください。博士号取得を目指す人は誰でも、その過程において壁にぶつかるものです。それでも適切な研究計画を作成して、その計画に従って着実に進めていけば、必ず成功できるはずです。自制心、研究者としての探求心を忘れずに、所属大学の規則に準じて最善を尽くしてください。無事に博士号が取得できることを祈っています。

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