14

転換語(transition words)の役割と種類:効果的な使い分け方

論文とは知識の交換のためのツールであり、正確かつ包括的に情報を伝達するために、考えを明確に伝えることが求められます。批判的な考えや分析、総合的な見解などを文章にまとめて発表することにより、研究者は各自の研究分野にとって有意義な貢献をすることができるのです。著者は、論文を執筆する際、文中に適切な比喩や隠喩を用いることで、自らの専門的技能の意義をよりよく理解し、学術界に有意義な貢献をするために技能を磨く努力をすることができますが、メリハリの良い文章を作成するには、それぞれの文の繋ぎ方にも注意が必要です。話の内容を変えたい、強調したいといった場合には、転換語(transition wordsまたはtransitional words)を挿入して話題を変えたり、具体例をつなげて説明を補う必要があります。この記事では、論文執筆における転換語の役割と、効果的に転換語を取り入れることで説得力のある文章を作成するために知っておくべき転換語の種類を解説します。

 

転換語とは

転換語とは、文またはパラグラフで話題を転換する際に使う単語やフレーズ(転換表現)のことです。研究論文のようなアカデミック・ライティングでは、論理的な情報の流れが非常に重要なので、内容の流れを分りやすく、かつスムーズにつなげる必要があります。文や段落のはじめに挿入される転換語は、趣旨の異なる前後の文章の関係を表す橋渡しの役割を果たします。さらに、文章の流れを作り、論理的に展開するのを助け、全体的な読みやすさを向上させることで、文章に一貫性とまとまりを持たせるのに役立ちます。

1. Additionally:情報の追加や参照するときに挿入

例文)Additionally, recent studies have demonstrated similar findings, reinforcing the validity of our results.

2. On the contrary:情報の対比や意見の相違を並べるときに挿入

例文)On the contrary, a different study found no significant relationship between exercise and cognitive function.

3. As a result:結果・影響を示す

例文)As a result of the new policy implementation, there was a significant decrease in student dropout rates.

4. For instance:例を挙げるときに挿入

例文)For instance, a recent study conducted by Smith et al. (2022) found that… ”

5. Firstly、subsequently、initiallyなど:順序・時系列や全体の構成を明らかにするために挿入

例文)Following participant recruitment, the study employed a randomized control design. Subsequently, data collection took place through…

6. In other words:意味や定義を明確にするために言い換える場合に使用

例文)In other words, the term ‘sustainability’ refers to the ability to meet the needs of the present generation without compromising the needs of future generations.

7. Notably:重要な発見などを強調するために挿入

例文)Notably, the study’s findings revealed a statistically significant correlation between X and Y.

8. In summary:まとめ、結論を書くときに使用

例文)In summary, this study provides a foundation for future research to explore the long-term effects of intervention programs on diverse populations.

上記は転換語のほんの一例ですが、それぞれの転換語の種類別の例を本記事で後述しています。転換語とその使い方の一覧PDF(英語のみ)もエナゴアカデミーのサイトからダウンロードできます。適切な使い方を理解せずに利用してしまうと、文章全体がかえって分かりにくくなってしまうので、注意しましょう。転換語の役割と種類を理解した上で、正しい配置で適切な転換語を使用するようにしてください。

アカデミック・ライティングにおける転換語の役割

転換語は、アカデミック・ライティングにおいて文章の明瞭性と一貫性を高める上で重要な役割を果たすものです。読者を導く言語的な道標であり、前後の文章の関係性を理解するのを助け、情報がスムーズにつながるようにすることで、文章全体の流れを作ります。分かりやすさと一貫性を高める転換語の役割を以下にまとめます。

A. 読みやすさと理解力の向上を図る

転換語を挿入して文章間をスムーズにつなぎ、情報を効果的に整理することにより学術的な文章の読みやすさとわかりやすさを高めます。読者が話についてこられるように順序だてて文章をつなぎ、アイデアや議論の構造を理解できるようにするのです。転換語は、読者を誘導し、理解を深め、読書体験を向上させると共に、アカデミック・ライティングを利用しやすいものにするのを助けるのです。

B. 思考と段落を整理する

転換語によって思考を整理し、学術論文の内容を一貫性のある構造に組み立てるのに役立ちます。順序や原因と結果の関係を示すことで、論理的な流れを作ります。段落をうまくつなげ、まとまりのある議論を展開することで読者がスムーズに文書を読めるようにすることができます。

C. 文章を明確にして、強調すべきところを強調する

転換語は、学術的な文章を明確にすることにも役立ちます。用語を定義したり、アイデアを言い換えたり、必要な説明を提供したりする際に挿入することで、情報を分かりやすくします。さらに、重要なポイントを強調し、大切な情報に注意を向けさせるのにも役立ちます。転換語を効果的に活用することで、著者は自分の考えを明確化させ、意図したメッセージを効果的に読者に伝えることができるのです。

D. 一貫性(Coherence)と連結(Cohesion)

学術文章を書く時には、一貫性(を意識しておくと良いでしょう。連結とは、文と文、段落と段落がきちんとつながっているか、流れがあるか、論理的かつスムーズな流れができているかに対し、一貫性とは、文章の統一性、つまり内容的に齟齬がないかです。文章全体の趣旨に合わない記述、伝えたいメッセージに関係しない記述は削除した方がよいでしょう。論理的なつながりを強化し、唐突な転換を防ぎ、読者が著者のメッセージに無理なくついて来れるように心がけましょう。

E. アイデアをつなぐ

追加、類似性、対比、例示などを表現するさまざまな転換語を適切に使い分けることで、読者が文章に書かれた著者の考えを読み取り、メッセージをより効果的に理解するのに役立ちます。

転換語の種類

転換語の中には、研究論文でよく利用されるものもあります。それぞれ使用される状況は異なるので、適材適所の転換語を効果的に使用するようにしましょう。

1.追加

追加する際に使う転換語(Additionally, Moreover, Alsoなど)は、議論されている主要なポイントを補助または補足する情報やアイデアを追加する際に使用します。また、話題を広げたり、さらなる証拠を提供したり、主張を補強する例を提示したりするのにも使えます。

追加を表現する転換語の例:

1)Furthermore, the study not only analyzed the effects of X but also examined the impact of Y.(この研究では、Xの影響を分析するだけでなく、Yの影響も調べた。)

2)Moreover, the results not only confirmed the initial hypothesis but also revealed additional insights.(その結果、最初の仮説が確認されただけでなく、さらなる洞察も明らかになった。)

3)Additionally, previous research has shown consistent findings, strengthening the validity of our study.(先行研究では一貫した結果が示されており、本研究の妥当性が強化された。)

2.比較・対照

比較・対照を示す転換語は、異なる概念、アイデア、調査結果の類似点、相違点、関係性を強調したい場合に使用します。明確なつながりを確立し、研究内のさまざまな要素の比較対照を容易にするのに役立ちます。

比較・対照を表現する転換語の例:

1)Similarly, other researchers have reported comparable findings, corroborating the generalizability of our results.(他の研究者からも同様の結果が報告されており、我々の結果の一般性を裏付けている。)

2)In contrast, previous studies have demonstrated consistent patterns, reinforcing the existing body of knowledge.(対照的に、先行研究は一貫したパターンを示しており、既存の見識を補強するものとなっている。)

3)In comparison, the current study offers a unique perspective by examining the relationship from a different angle.(それに比べ、本研究は、異なる角度から関係を検討することで、ユニークな視点を提供している。)

3.原因・結果

原因・結果を示す転換語は、ある原因とその結果の効果や結果の関係を示したいときに使用します。原因と結果の関係を明確にし、読者が異なる変数、出来事、現象間のつながりを理解できるようにします。

原因・結果を表現する転換語の例:

1)As a result, the data provides compelling evidence for a causal relationship between X and Y.(その結果、データはXとYの間に因果関係があることを示す説得力のある証拠を提供する。)

2)Consequently, the hypothesis can be supported by the observed patterns in the collected data.(その結果、収集されたデータで観察されたパターンによって仮説を支持することができる。)

3)Hence:Hence, the proposed model is validated, given the consistent and statistically significant results.(したがって、一貫性があり統計的に有意な結果から、提案されたモデルは妥当である。)

4.例・解説

例・解説を示す転換語は、具体的な事例や証拠、図解を提示して、要点や主張をサポートし、明確にしたいときに使います。これらの単語やフレーズは、実例や具体的なケースを提示することで、考えをより具体的に示すのに役立ちます。

例・解説を表現する転換語の例:

1)For example, one study conducted by Jackson et al. (2018) demonstrated a similar phenomenon in a different context.(例えば、ジャクソンら(2018)が行ったある研究では、異なる文脈で同様の現象が実証されている。)

2)To illustrate this point, consider the case of Company X, which experienced similar challenges in implementing the proposed strategy.(この点を説明するために、提案された戦略を実施する際に同様の課題を経験したX社のケースを考えてみる。)

3)In particular, the data highlights the importance of considering demographic factors, such as age and gender, in the analysis.(特に、年齢や性別といった人口統計学的要因を分析に考慮することの重要性がデータから浮き彫りになった。)

5.順序と時系列

順序(シーケンス)と時系列を示す転換語は、学術研究論文において、出来事、アイデア、プロセスの順序、進行、順番を示す際に使用します。これらの単語やフレーズは、論理的かつ一貫した方法で情報を整理するのに役立ち、読者が研究の時系列的な流れを追えるようにします。

順序と時系列を表現する転換語の例:

1)First and foremost, the study aims to examine the long-term effects of intervention X on outcome Y.(何よりもまず、この研究の目的は、介入Xが結果Yに及ぼす長期的効果を調べることである。)

2)Subsequently, the participants were randomly assigned to either the control or experimental group.(その後、参加者は対照群と実験群のいずれかに無作為に振り分けられた。)

3)Finally, the data analysis revealed significant temporal trends that require further investigation.(最後に、データ分析により、さらなる調査が必要な有意な時間的傾向が明らかになった。)

6.明確化・言い換え

明確化・言い換え(リステートメント)を示す転換語は、さらに説明を加えたいとき、論点を明確にしたいとき、あるいは別の方法で考えを言い換えたいときに使用します。これらの単語やフレーズは、読者が著者の主張や考えを明確に理解できるようにし、曖昧さや混乱を防ぐものです。

明確化・言い換えを表現する転換語の例:

1)In other words, the phenomenon can be explained by the interplay of various psychological and environmental factors.(つまり、その現象は、さまざまな心理的要因や環境要因の相互作用によって説明できる。)

2)Specifically, the term “efficiency” refers to the ability to achieve maximum output with minimum resource utilization.(具体的には、”効率性 “という用語は、最小限の資源利用で最大のアウトプットを達成する能力を指す。)

3)To clarify, the concept of “sustainability” encompasses the ecological, economic, and social dimensions of development.(はっきり言えば、「持続可能性」という概念には、開発の生態学的、経済的、社会的側面が含まれている。)

7.強調

強調を示す転換語は、特定のポイント、アイデア、所見を強調したい場合に使用します。これらの単語やフレーズは、重要な情報に注意を向けさせたり、特定の側面や主張の重要性を強調したりするのに役立ちます。

強調を表現する転換語の例:

1)Notably, this study addresses a significant gap in the existing literature.(注目すべきは、本研究が既存の文献における重要なギャップを埋めるものであるということである。)

2)Importantly, the findings have implications for future policy decisions.(重要なことは、この研究結果が将来の政策決定に影響を与えるということである。)

3)In particular, the study examined the relationship between age and cognitive performance.(特に、本研究では年齢と認知能力の関係を調べた。)

8.要約・結論

要約・結論を示す転換語は、論文で論じた主要なポイントを簡潔に要約し、提示された知見や議論に基づいて結論を導き出したい場合に使用します。これらは論文の終わりを告げ、研究に区切りをつけるのに役立ちます。

要約・結論を表現する転換語の例:

1) In conclusion, the findings unequivocally support the initial hypothesis, emphasizing the significance of the proposed theory. (結論として、本調査結果は当初の仮説を明確に支持し、提案された理論の意義を強調している。)

2)Overall, the results indicate a consistent pattern, providing a foundation for future research in this area.(全体として、結果は一貫したパターンを示しており、この分野における今後の研究の基盤となるものである。)

3)In summary, this research makes a valuable contribution to the existing literature by extending our understanding of the topic.(要約すれば、本研究は、このテーマについての理解を深めることにより、既存の文献に貴重な貢献をしたと言える。)

転換語を使う際の注意点

アカデミック・ライティングで転換語を使う際は、以下の一般的な注意点に気をつけ、明確でまとまりのある効果的な文章の作成を心がけることが大切です。

1.転換語の多用

文章中に同じ転換語を多用すると、文章が乱雑な印象になり、流れが乱れてしまいます。文や段落に過度な切り替えを入れずに、明確さと一貫性を高めるために効果的に転換語を挿入するようにします。

2.不適切または無関係な転換語の使用

転換語は、文章の文脈や目的に合ったものを選びましょう。接続する文脈やアイデアの関係性に合わない転換語の使用は避けます。きちんとした関連性があり、文章全体の一貫性に貢献する転換語かどうかを確認しましょう。

3.校正と編集を怠る

文章を書くときと同様、転換語を使う場合も校正と編集が重要です。転換語が正しく効果的に使われているか、自分の書いた文章を注意深く見直しましょう。転換語の使い方に矛盾や冗長さ、誤りがないかを確認し、必要な修正を加えます。

4.言葉の意味の理解不足

転換語を文章に挿入する前に、その意味と使い方を正確に理解することが大切です。転換語の使い方が間違っていたり、不適切だったりすると、混乱や誤解を招く恐れがあります。そのため、信頼できるリソースやスタイルガイドを参照し、それぞれの言葉の正しい使い方に慣れておくことが大切です。

5.論理的な流れを無視する

転換語は、読者を誘導し、論理的なアイデアの流れを作るのに役立つものですが、適切な転換語を使わないと、バラバラで断片的な文章になってしまいます。転換語で前後の文章や段落と明確なつながりを作り、文章の一貫性を保つようにしましょう。

6.転換語に頼りすぎる

転換語はライティングにおける貴重な基本要素ですが、効果的な文章や構成の代わりとなるものではありません。転換語だけに頼って考えをつなげると、文章が弱くなったり、構成が稚拙になったりします。転換語の使用と並行して、しっかりとした主題文(トピック・センテンス)、明確な段落構成、論理的なアイデアの進行を作成する能力を身につける必要があります。

7.文の多様性を無視する

転換語を使い、文構造の多様性と洗練度を高めましょう。同じ単語を繰り返し使うのは文章が単調になるので避け、アイデア間の具体的な関係性を伝えるさまざまな転換語を模索して使い分けましょう。

転換語は、文章をつなぎ、明確にする強力なツールですが、正しい場所で的確に使うことがポイントです。転換語を戦略的に使うことで、単なるアイデアの寄せ集めをまとまりのある、よく構成され、示唆に富んだ学術論文へと昇華させます。転換語を効果的に使いこなすことで、学術論文のインパクトが高まり、研究分野に有意義な貢献をすることができるのです。

もちろん、表現に磨きをかけるためにプロフェッショナルに英文校正を依頼することもできます。研究支援エナゴはもっともベーシックなノーマル英文校正のプランでも該当分野の専門家が2名体制で校正を担当します。

エナゴアカデミーの「論文何でも相談室」では、無料で過去の質問を検索したり、論文執筆の専門家に質問ができます。ぜひ、ご活用くださいね。

 

X

今すぐメールニュースに登録して無制限のアクセスを

エナゴ学術英語アカデミーのコンテンツに無制限でアクセスできます。

  • ブログ 560記事以上
  • オンラインセミナー 50講座以上
  • インフォグラフィック 50以上
  • Q&Aフォーラム
  • eBook 10タイトル以上
  • 使えて便利なチェックリスト 10以上

* ご入力いただくメールアドレスは個人情報保護方針に則り厳重に取り扱い、お客様の同意がない限り第三者に開示いたしません。

研究者の投票に参加する

研究・論文執筆におけるAIツールの使用について、大学はどのようなスタンスをとるべきだと考えますか?