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オンライン学会のメリット・デメリットと活用法

未曾有のCOVID-19パンデミックは、専門家間の情報発信に新しい手法を採用するきっかけとなりました。そのひとつが、オンラインによる学会やイベントの開催が加速度的に拡大したことです。パンデミック対策としてだけでなく、長い目で見た場合の利点も踏まえれば、ネットワーキングにおける技術革命を受け入れることは今や必然ともいえるでしょう。STM(科学・技術・医学)業界も、このテクノロジー主導の流れと無縁ではいられません。オンライン学会は、世界中の科学者が自分の研究室や自宅にいながらにして参加できる、新しいネットワーキングのプラットフォームなのです。

この記事では、オンライン学会やカンファレンスに参加する研究者にとって役立つ、ベストプラクティス(効率的な活用法)について概説します。

オンライン学会・カンファレンスのメリット

出席の機会の増加

研究者は、学会のオンライン開催が増加したことにより、以前は参加できなかった学会も含め、より多くの学会に出席することができるようになりました。

簡単なネットワーキング・オプション

多くの学会では、事前にアジェンダや講演者の詳細情報が提供されるため、参加者はより幅広い人々と容易につながることができます。

時間、費用、労力の節約

長年、学会への参加は、費用と時間がかかるものでしたが、オンライン学会なら、旅費や宿泊費、その他の雑費を気にすることなく学会に参加し、世界中のさまざまな地域の研究者や専門家、発表者やパネリスト、参加者とつながることができます。

集中力の向上

時差のある場所に移動する必要がないため、睡眠不足になることも体力を消耗することなく参加し、内容に集中することができます。

迅速なフィードバック

オンライン学会では、出席者がQ&A形式のインタラクティブなセッションで簡単に質問することができるため、迅速なフィードバックを得ることができます。

環境にやさしい

オンライン学会では、紙の冊子やパンフレット、補足資料などを配布する代わりに、これらの情報源をウェブ掲載するなどの配信方法を採用することで紙の使用削減が可能です。さらに、参加者は現地への移動が必要ないので、飛行機などの交通手段の利用にともなう二酸化炭素排出量を大幅に削減することができます。

オンライン学会のデメリット

従来の対面会議からオンライン会議への移行は、チャンスとともに課題ももたらしました。オンライン会議にも、遠隔地からの出席という制約がつきまとっています。

オンライン環境の不具合による開始の遅延

主催者側の技術的なトラブルにより、開始時間が予定より遅れることがあります。

特定のオンライン会議ソフトウェアによるアクセシビリティの問題

世界中の参加者を対象に開催されるオンライン会議に参加するには、特定のアプリケーションをダウンロードしておく必要があるケースもありますが、国・地域によっては、特定のアプリケーションのダウンロードや使用が制限されている場合があります。そうしたアクセシビリティが原因で、登録をしても実際には参加できなくなってしまうという事態も起こり、申込者数と出席者数に大きな差が生じてしまうことも出てきます。

互換性のないブラウザやファイアウォールによるアクセス制限

自分の使用しているブラウザに学会が指定するアプリケーションとの互換性がなかったり、所属組織や企業がセキュリティの観点から特定のウェブ・アプリケーションをブロックするファイアウォールを設置していたりする場合、オンライン会議への参加が制限されてしまうこともあります。

ツールの有無による制限

すべての研究者がオンライン学会に出席するのに必要なツール(PC、適切なオーディオ機器、ネットワーク設備など)を持っているわけではないので、参加者によっては通信の安定性(品質)や聞き取りやすさ(音質)が損なわれる可能性があります。

インターネット帯域幅の問題

オンライン会議中に技術的な不具合が生じるのを避けるためには、良好なインターネット接続を確保しておくことが重要です。インターネットの通信速度だけでなく、ネットワークの一貫性、同時ダウンロード対応などの要因も通話の質に影響を与えます。

画面共有の難しさ

画面共有もオンライン会議の重要な要素です。ネットワーク上で画面を共有する際、画面の表示に手間取ると、会議の進行に支障をきたすことになってしまいます。

慎重に扱うべきデータの誤共有

異なるサーバーに接続しているときや、画面を共有しているとき、意図せずに慎重に扱うべき情報を表示してしまう恐れは捨てきれません。本来公開すべきではないデータを誤って共有してしまうことは、研究者個人だけでなく所属組織に甚大な損失をもたらす可能性があります。

オンライン会議の参加前に準備しておくこと

会議ツールを使いこなす

オンライン会議に慣れないうちは、使用する会議ツール(アプリケーション)の機能をすべて理解するのは難しいかもしれません。会議の前に時間を取って、ツールの使い方を把握しておくことをお勧めします。会議へのアクセス方法、音声入出力、カメラ、画面解像度などを確認しておきましょう。

各セッションをカレンダー機能でスケジュール管理

カレンダーに予定を入力し、リマインダーを設定しておきましょう。そうすることで、他の重要な仕事のスケジュールを立てたり、作業の優先順位をつけたりすることができますし、学会中のさまざまなセッションのタイミングと重ならないように時間管理することができます。

アジェンダに従ってスケジュールする

セッションにリアルタイムで参加するだけでなく、後から録画を視聴するという選択肢がある場合も多いでしょう。アジェンダに従ってスケジュールを作成し、会議を最大限に活用しましょう。

食事と休憩

オンラインで参加する際にも、食事と適度な休憩は取るようにしましょう。空腹や疲れは、集中力や学習効率に影響するので、活動的に参加できるように、食事と休憩を取るように時間を配分しましょう。

ソーシャルメディアを更新する

オンライン学会についてSNSに投稿し、ネットワーク内の他の人にも詳細や役立つ情報を知らせ、仲間にも情報共有しましょう。

オンライン会議を最大限に活用する

学会は参加するだけでは十分とは言えません。参加する目的のひとつは、キャリアアップにつなげることです。ここからは、オンライン会議への参加をキャリアアップに最大限に活かすための戦略をいくつか紹介します。

メモを取る

オンライン会議でも昔ながらのやり方で紙にメモを取ることをお勧めします。そうすることで、会議中も集中力を保つことができるでしょう。

アポイントメントを取る

学会の主催者、発表者、主要な講演者とつながりを構築しましょう。個人的にアポイントメントを取り、研究分野のネットワークを広げましょう。

同業者とのネットワークも広げる

LinkedIn、Facebook、ResearchGateなどを通じて、学会に参加した同業者(研究者)と連絡を取り合いましょう。

セッションをレビュー(再視聴)する

オンライン会議のセッションは、多くの場合、開催期間中または期間後にオンデマンドで視聴することができます。希望するセッションを再視聴することで、学会参加の経験を最大限に活用できます。

相互参加する

オンライン会議上で開催されるオンライン・クイズやゲームなどに参加し、他の参加者との親交を深めます。

質問する

スピーカーや発表者が主催する質疑応答セッションで質問し、疑問を解消してください。

COVID-19の規制緩和後もオンラインで開催される学会がある一方で、オンライン学会では「インタラクティブな交流が難しい」といった不満に対応するために、対面形式に戻す学会や、ハイブリッド形式で開催する学会も出てきています。ここでは参加者側のメリットとデメリットをまとめましたが、同様に主催者側にもメリットとデメリットがあります。いずれの開催形式にしても、学会に参加する以上は、最大限活用できるようにしておきましょう。

オンライン学会への参加やネットワーク構築についての疑問などあれば、ぜひQuoraで質問してみてください。エナゴアカデミーも、研究論文の執筆や出版のさまざまな側面に関するよくある質問に、専門分野のエキスパート、著名な研究者、出版の専門家で構成されるチームがQuoraで回答しています。

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