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学術論文における「e.g.」と「i.e.」の使い方

文章の中でよく見かける略語で、通常は括弧の中にあり、その前後の文脈からだいたいの意味は把握できるようなものがありますね。そのひとつが「e.g.」です。これは、ラテン語の「exempli gratia」の略で、「例えば(for example)」という意味です。もうひとつよく見かけるのは「i.e.」で、これはラテン語の「id est」の略です。英語にすると「that is to say」や「in other words」、日本語の「つまり」といった意味合いです。文中で、あるポイントを強調するための例を挙げる際に「e.g.」を使うことや、一文でくどくどと説明するのではなく、言い換えて要点を述べるために「i.e.」を使うことは少なくありません。

しかし中には両者を混同して、間違って使う人もいます。ここでは、間違えないためのヒントと用例をご紹介します。

「e.g.」と「i.e.」の違い

上記のように、「e.g.」は 「for example」の略です。間違えないための簡単な方法は、「e」で始まるから「example」だと覚えておくことです。では「e.g.」の実際の文中での用例を見てみましょう。

“There are many types of trees (e.g., spruce, oak, maple) in the study area.”

調査地には多くの種類の木(例:トウヒ、オーク、カエデ)がある。

“There were several breeds of horse (e.g., Thoroughbreds, Appaloosas, Paints) at the barn where we conducted our study on West Nile Virus.”

我々が西ナイルウイルスの研究を行った厩舎には、さまざまな種類の馬(例:サラブレッド、アパローザ、ペイント)がいた。

「e.g.」の後に記述された種の名前は例として挙げられただけで、3種類の樹木や3馬種以外にもたくさんの種類が存在することが暗示されます。

もし、そこに生えている/飼われているのが、上記の3種の樹木、馬だけだとすれば、以下のような文章になります。

“There are many spruce, oak, and maple trees in the study area.”

研究エリアには、トウヒとオーク、カエデの木がたくさんある。

“There were Thoroughbreds, Appaloosas, and Paints at the barn where we conducted our study on West Nile Virus.”

我々が西ナイルウイルスの研究を行った厩舎には、サラブレッド、アパローザ、ペイントがいた。

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「i.e.」も覚えるのは簡単です。「i」で始まるので「in other words」だと覚えればよいのです。ここでは、「i.e.」の用例を見ていきましょう。

“After work, I’m going to try the new restaurant (i.e., All About Pasta) to decide on a venue for the reception.”

仕事が終わったら、披露宴の会場を決めるために、新しいレストラン(=All About Pasta)に行ってみようと思っている。

“To buy the car that I really want (i.e., a Tesla), I will have to work a lot of overtime.”

本当に欲しい車(=テスラ)を買うには、残業をたくさんしなければならない。

「e.g.」は例を示すので対象は書かれたものに限定されない、「i.e.」は説明や正確な情報を示すのでより対象を限定する、というように2つの略語の違いを考えてみると覚えやすいかもしれませんね。

「e.g.」と「i.e.」の句読点のつけ方や表記ルール

正しい句読点も重要です。この2つの略語については、例外もありますが、句読点の使い方はかなり単純です。両者の句読点のルールの一部を以下に示します。

  • 文頭に置かれる非常にまれなケースを除き、すべて小文字での表記。文頭に置かれる場合は最初の文字のみを大文字にします。しかし文頭には、略語を使わず、代わりに「for example」や「in other words」などと書き出すのが望ましいでしょう。
  • 各文字の後にピリオドを打ちます。
  • 2つ目のピリオドの後にカンマを置きます(注:イギリス英語ではカンマは使いません)。
  • ラテン語の略語ですがイタリックにはしません。ただし、著者ガイドラインによっては、外国語の単語やフレーズをすべてイタリック体にするよう指定しているものもあるので注意が必要です。科学的な文章では、これらの略語と同様に「in vitro」のようなフレーズがイタリックで表記されることがよくあります。投稿先のガイドラインを必ず確認してください。
  • 括弧の中か、文の中にフレーズを入れます。これは、指定されるスタイル次第です。ほとんどの科学的な文章では、括弧の中にフレーズを入れます。また、すべての散文や詩、リベラルアーツの多くの分野で使用されている「Chicago Manual of Style,」では、常に括弧の中に入れるように指定しています。

このような略語や句読点については、学問分野によってそれぞれに採用しているスタイルガイドがあり、そのルールが適用されます。一般的には、学術的な文章を書く場合は、上記のポイントに従うべきでしょう。略語のルールはすべての分野でかなり標準化されていますが、これらのルールに例外がないかどうか、著者ガイドラインやその分野のスタイルガイドをその都度確認するようにしてください。

「e.g.」や「i.e.」の使用する際に疑問がわいたことはありますか?少しでもこの記事がお役に立てば幸いです。

 

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