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インタビューを研究に用いることの重要性とその進め方

研究の一環として実施する調査は、さまざまな学術的、科学的、専門的なデータ収集において、極めて重要な役割を果たすものです。研究者は、インタビューを通して個人の考えや経験、視点を深く掘り下げる機会が得られることで、複雑な現象を包括的に理解することが出来るようになります。学術研究を進める上で、特定の題目について効果的で洞察力のあるデータ収集方法を考えることは大変重要です。この記事では、質問者(研究者)が対象となる回答者に質問することで特定のテーマに関する一次情報(データ)を収集するための定性的な手法であるインタビューについて、その特徴と進め方についてお伝えします。

最初に、インタビューの3つの主な要素を挙げてみましょう。

インタビューの3つの重要な要素

Flexibility 柔軟性:研究者は、参加者の回答に基づいて質問を調整しながら調査を進めることで、新たな分野を探求することができる

Elaborative 精巧さ:参加者はインタビューの間に自分の回答や複雑な考えを明確に伝えることができるので、誤解が生じる可能性が低くなる。また、研究者は参加者の回答のニュアンスや欠落している要素を容易に確認することができる

Contextual Understanding 文脈の理解:インタビューを行うことで、参加者の経験や視点に影響を与えている文脈的要因を捉えることができる。研究者は、個人の見方を形作る社会的、文化的、環境的要因を探ることができる

一次情報(データ)収集におけるインタビューの重要性

直接情報を入手するという役割においてインタビューはとても重要な手段です。インタビューを行うことで研究者は参加者と直接対話する機会を得られるので、偏見のない一次情報(データ)を収集することができます。

1.主観的経験

インタビューは、を深く掘り下げるのに役立ちます。研究者が参加者と直接会話をすることで、参加者の経験、視点、意見のニュアンスや複雑さを掘り下げることができます。インタビューを行うことで、他の方法では難しい、研究対象の包括的な理解が可能になります。また、インタビューは、参加者自身によって語られるものなので、主観的な経験を捉えることができるという特長も備えています。参加者から自分の考え、感情、信念を直接聞くことで、調査結果に深みを増すことができるのです。

2.個人的な洞察

インタビューでは、研究者と参加者がインタビューの行う目的について、意見や感想を共有することができる上、参加者は自分の考えや経験を伝えることができるので、内容の濃い定性的なデータを得ることができます。インタビューで得られる個人的な話は、調査に人間的な要素を加え、参加者が自分の視点からテーマに対する理解を深めることにもつながります。また、インタビューには、予期せぬ洞察や新たなテーマを発見する機会もあります。自由回答形式の質問をしたり、参加者の話を積極的に傾聴したりすることによって、当初は考えられなかったような新しい視点、アイデア、やり方を見出すのに役立つこともあります。そうした要素は新たな探求の道を開くことになるでしょう。

3.明確化と検証

研究者は、インタビュー中に参加者の回答を明確にし、理解したことを確認することができるので、より正確なデータを収集し、解釈することができます。さらに、参加者の発言をより深く探り、情報の曖昧な部分を明確にすることも可能です。

4.文脈の情報

インタビューでは、研究テーマを包括的に理解するための文脈的情報を収集することができます。参加者は、自らの経験、行動、信念を形作っている社会的、文化的、環境的要因についての洞察を提示することができます。このような文脈の情報は、研究者がデータをより広い文脈の中に位置づけ、より微妙な分析を容易にするのに役立ちます。

5.非言語シグナル(言葉以外の合図)

インタビューでは、言葉による回答に加え、参加者のボディランゲージ、表情、声のトーンなど、非言語シグナルを観察することができます。非言語シグナルからは、感情や態度、快適度合いなどを推測することができるだけでなく、非言語シグナルを言語的な回答と合わせることで、参加者の経験をより総合的に理解することができるので、データ収集プロセスはより豊かなものとなります。

ここで挙げたように、インタビューにはいくつかの利点があり、情報収集のための信頼できるツールとなっています。しかし、有用なデータを収集するためには、適切なアプローチ(インタビューのタイプ)を選択して行わなければなりません。

インタビューのタイプ

研究者は、研究目標、研究の性質、収集するデータに基づいて、いくつかのインタビューを使い分ける。ここでは、一般的なインタビューのタイプを紹介します。

1.構造化(構造化面接)

  • 構造化インタビューとは、あらかじめ設定された評価基準に準じて形式通りに進めるインタビュー
  • あらかじめ質問項目を準備しておく
  • すべての参加者は、同じ質問項目を同じ順序で聞かれることになるので、自由度がない
  • インタビューの標準化しやすく、回答の比較や定量分析が容易
  • 高度な標準化と比較可能性を得たい調査や研究で使用される

2.半構造化インタビュー(半構造化面接)

  • 半構造化インタビューとは、基準を作らずに行うインタビューで、あらかじめ決められた質問を組み合わせ、回答内容に応じて踏み込んでいくといった柔軟な枠組みで行われる
  • フォローアップの質問や自由なディスカッションの機会が得られる
  • 研究者は、質問のリストを基に質問するが、参加者の回答に応じてインタビューを調整、深堀することができる
  • インタビュー全体である程度の一貫性を保ちながら、深い探求が可能になる
  • 内容の豊富なデータが望まれる質的研究において、広く用いられている

3.非構造化インタビュー(非構造化面接)

  • 非構造化インタビューとは、プロセスにおいて最大の柔軟性と自由度を有するインタビュー
  • あらかじめ質問項目を決めず、テーマだけを決めておいて回答者から自由な意見や考えを引き出す
  • 参加者の回答と調査者の関心に基づいて自然な会話で進める
  • 自由な形式での探求が可能であり、参加者は自分の経験、考え、視点を自由に共有することを求められる
  • 先入観のない質問に絞ることで、新しい、あるいは複雑な研究テーマを探求するのに役立てることができる

4.グループインタビュー(フォーカス・グループ)

  • グループインタビューとは、複数の参加者が特定のテーマに関するファシリテイテッド・ディスカッション(ファシリテーターによって進行される会話)に参加するもの
  • 参加者間の相互作用を促し、意見交換を可能にしてグループでの話し合いを活性化させる
  • 多様な視点を捉え、集団的な洞察を生み出すのに有益
  • 市場調査、社会科学、または共有された経験を必要とする調査によく使用される

5.ナラティブ・インタビュー

  • ナラティブ・インタビューは、参加者の個人的な話、見解、経験、ナラティブ(物語、語り)を引き出すことに重点を置くインタビュー
    研究者は、個人の人生の旅路を調べることを目的としてこのインタビューを行う
  • 参加者が自分自身のナラティブを構築し、共有することができるので、結果として研究者は豊かな定性的データを入手することが可能になる
  • 定性的研究、口述歴史または個人の経験やアイデンティティに焦点を当てた研究では、ナラティブ・インタビューが用いられる

6.エスノグラフィックインタビュー

エスノグラフィックインタビュー  とは、フィールドワーク(現地調査)を通じて異民族の文化の行動様式を分析し、理解するアプローチであるエスノグラフィー調査(行動観察)の文脈で実施される調査で、研究者は特定の社会的・文化的環境に身を置いて行う
「エスノグラフィー」とは、民族学、社会学や人類文化学などで用いられる用語

  • 参加者の経験、信念、慣行を参加者の文化的背景の中で理解することを目的とし、それによって異なる民族グループの多様性を理解する
  • 会話をすることで、参加者との間に信頼関係を築き、参加者の日常生活を観察し、研究対象の文化のニュアンスをとらえる

これらのインタビューのタイプは、互いに矛盾するものではありません。研究者は研究を行うにあたって最も包括的なデータを収集するために、いくつかのアプローチを組み合わせて用いることがよくあります。研究目的と研究テーマの性質によって最適なインタビュータイプを選択することが大切です。

インタビューの進め方

インタビューのメリットを活かし、参加者からより多くの情報を収集するためには、プロセス全体を入念に計画して実行することが重要です。インタビューを実施する際には、成功させるために必要な手順を知っておく必要があります。以下にインタビューの進め方を示します。

  1. 目的を明確にし、何を達成するのか、ゴールを理解しておく
  2. 適切なインタビューのタイプを選ぶ
  3. インタビューに必要な資料を整理する
  4. 取り上げるべき質問を把握しておく
  5. インタビュー対象者の属性を分析する
  6. インタビュー対象者を選ぶ
  7. 十分な情報を収集するためのインタビュー質問を作成する
  8. インタビューの日程を決める
  9. インタビューの目的を(対象者に)説明する
  10. インタビュー対象者の回答を分析する

インタビューを行うにあたっての留意事項

インタビューは、その柔軟な性質からデータ収集のための貴重なツールですが、そのプロセスを効果的なものにするためには、留意しなければならないこともあります。まず、参加者(対象者)に対して偏見や先入観を持つべきではありません。次に、研究者は倫理的配慮を遵守し、参加者との文化的な違いを尊重しなければなりません。質問が不快感を与えたり軽蔑的な内容になったりしないように、慎重に調整する必要があります。質問者は、参加者のプライバシーを尊重し、参加者から得られた詳細な情報の秘密性を確保しなければなりません。

質問者(インタビュアー)によるバイアス

研究者はバイアスを認識し、参加者の回答に影響を与えないよう中立を保つよう努めなければならない。偏見のないアプローチを維持することは、収集したデータの信憑性を確保するために極めて重要である。

サンプリング

多様で代表的なサンプルを確保するため、参加者の選定には慎重に配慮すべきである。さまざまな経歴、経験、視点を持つ参加者を含めることで、データの豊かさと一般化の可能性を高められる。

倫理、同意、守秘義務

研究者は倫理指針を遵守し、参加者からインフォームドコンセント(説明を受けて納得したとの同意)を得なければならない。参加者に研究の目的と潜在的なリスクについて知らせ、参加者は説明を理解した上で同意する必要がある。参加者のプライバシーを保護し、その詳細の秘密を保持することは必須である。

個々の違いの尊重

研究者は文化の多様性を理解し、その違いを尊重しなければならない。質問は不快感を与えるものであってはならない。参加者との間に健全な境界線を設け、意見の違いを尊重する。

インタビューを行う際、これらの留意事項に十分に配慮することで、研究者は収集したデータの妥当性と信頼性を最大限に高め、確実で有意義な研究成果につなげることができるでしょう。

 

 

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