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研究の目的とねらい―研究を成功に導く2大要素

目的地を決めずにドライブしている自分を思い浮かべてみてください。なぜ運転しているのか、どこに向かっているのか―、どうやって目的地に到達しようとしているのか―不安になってきませんか?同じように、研究を順調に進めるためには、研究目的とねらいを明確にする必要があります。研究の目的とねらいは、あらゆる研究プロジェクトの基礎となるものです。研究の明確な方向性と目指すべき到達点を掲げることで、研究プロセスを通じて集中力を維持し、研究を軌道に乗せることができます。目的とねらいは、研究を成功に導く、信頼できるナビゲーション・ツールなのです。

研究プロジェクトの成功のためには、研究目的とねらいの関係性を理解することが重要です。この記事では、目的とねらいの重要性を探り、その違いを理解し、研究の質に与える影響について掘り下げていきます。

研究の目的とねらいの違い

研究において、目的とねらいは2つの重要な要素ですが、たびたび同じ意味で使用されているのが見受けられます。この2つは似ているように見えて別のものであり、目指すところも異なります。

研究の目的

研究目的とは、研究の全体で「目指すもの」を説明する広義な記述です。研究の全体的な方向性を示し、研究を行うことで成し遂げられることを示します。研究目的は、研究が最終的に目指すことを一般的かつ抽象的な記述で示します。

研究のねらい

研究のねらいとは、特定の時間枠内で達成することを目指した、具体的で測定可能、かつ達成可能な“めあて”のことです。研究目的をより詳細に、管理しやすい構成要素に分解し、何を達成したいのか、どのように達成するのかを明確にします。

この例におけるねらいは、目的を果たすために達成しなければならない具体的な目標を示しています。基本的に、目的は研究の全体的な方向性を示すものであり、めあては目的を達成するために成し遂げなければならない具体的なステップやタスクを示すものです。つまり、目的は研究の大まかな方向性を示し、研究の目的を達成するために研究者がやらなければならない小さなマイルストーンを示しています。例えるなら、ドライブ旅行を計画するとき、研究の目的は到達したい目的地であり、研究のねらいはそこに到達するために必要な具体的なルートとなります。

目的とねらいは相互に関連しています。ねらいは、研究方法を定める上で重要な役割を果たし、どのようにデータを収集し、分析するかという道筋を示唆するものです。具体的な到達点を定めることで、研究の目標、ひいては研究の目的を達成するための研究計画を立てることができるようになります。

目的とねらいを明確にすることの重要性

研究目的・ねらいを明確に定めることが研究の質に与える影響は計り知れません。しかし、単に目的・ねらいを定めれば良いというものでもありません。研究の目的とねらいを明確にすることの重要性を以下に挙げておきます。

  1. 方向性を示す:目的およびねらいを明確にすることで、研究の具体的な方向性を示し、研究が着実に特定のトピックや問題に集中できるようにします。研究の幅が広がりすぎたり、焦点が定まらなかったりすることを防ぎ、研究の関連性と意義が保たれるようになります。
  2. 研究デザインの指針となる:研究の目的とねらいは、研究デザインと方法を考える上での指針となり、リサーチクエスチョンに対する答えを導きだし、研究の目標を成し遂げることを確実にします。
  3. リソース配分に役立つ:研究の目的とねらいが明確であれば、時間、資金、人材、その他必要な資材などのリソースを効果的に配分することができます。研究を行うのに必要なリソースを特定し、効率と生産性を最大化する方法でリソースを配分するのに役立ちます。
  4. 評価の助けとなる:研究の目的とねらいを明確に定めることで、研究プロジェクトの成功を効果的に評価することができます。研究がねらった目標を成し遂げたかどうか、また、目的が達成されたかどうかを評価することができます。この評価プロセスは、研究プロジェクトにおいて、さらに注意や修正が必要と思われる部分を特定するのにも役立ちます。
  5. コミュニケーションを強化する:研究の目的とねらいが明確に定めることは、研究チーム、利害関係者、資金提供機関、その他の利害関係者間のコミュニケーションを強化するのに役立ちます。明確な目的とねらいがあれば、研究プロジェクトに関わるすべての人が、研究の目的とねらいを理解することができ、それにより共同研究が促進され、最終的に目指すことを全員が共有し、そこに向かって取り組むことができるようになります。

研究目的・ねらいの立て方

効果的な研究目的・ねらいを立てるには、明確で具体的、達成可能で、かつ適切であることを確認するための体系的なプロセスが必要です。まず、研究によって何を達成したいか、研究によってどのような影響を与えたいのかを自問することから始めましょう。目的を明確に理解したら、それを具体的で達成可能な目標に落とし込むことができるはずです。以下に、研究の目的とねらいを作成する際の手順を示します。

  1. リサーチクエスチョンを特定する:研究を通じて得たい答えを問うリサーチクエスチョンを明確にします。この作業は、研究の範囲を定義するのに役立ちます。優れたリサーチクエスチョンの特徴を理解することで、より明確な目的・ねらいを設定することができます。
  2. 文献レビューを実施する:研究目的とねらいを定める際には、研究課題やリサーチクエスチョンに関連する主要な概念、理論、方法を特定するために、文献レビューを実施することが重要です。徹底した文献レビューを行うことで、自分が研究しようとしている分野でどのような研究が行われてきたか、文献にどのようなギャップがあるのかを理解することができます。
  3. 研究目的を特定する:研究の重要な到達点を要約した研究目的を作成します。研究目的は、広義かつ簡潔であるべきです。
  4. 研究のねらいを設定する:リサーチクエスチョンと研究目的に基づいて、研究によって何を達成するつもりなのか、具体的な研究目標を立てます。この目標は、具体的、測定可能、達成可能、関連性があり、時間的制約がある(SMART)ものであるべきです。
  5. 行動を示す動詞(動作動詞)を使う:研究の目的や目標を説明するときは、「調査する」「調べる」「分析する」「比較する」などの動作動詞を使いましょう。そうすることで、より具体的で測定可能なものになります。
  6. リサーチクエスチョンとの整合性を確認する:研究の目的・ねらいが、リサーチクエスチョンに整合しているかを確認します。そうすることで、研究の焦点が定まり、目的が研究課題に答えるのに十分なほど具体的であることを確認することができます。
  7. 改善と修正を行う:研究目的・ねらいが作成されたら、必要に応じて改善・修正します。同僚やメンター、スーパーバイザー(指導教員)にフィードバックを頼み、明確かつ簡潔で、与えられたリソースと時間枠の中で達成可能であることを確認しましょう。
  8. 伝える:研究目的とねらいを確定したら、研究チーム、利害関係者、その他の関係者に伝達する必要があります。共有することで、全員が同じ最終到達点に向かい、研究が達成すべきことを理解した上で作業を進めることができるようになります。

目的・ねらいを設定する際に陥りがちな落とし穴

研究の目的とねらいを設定するときに、幾つか研究者が陥りやすいことがあるので下に挙げておきます。

  1. 広義すぎる、または曖昧すぎる:目的やねらいが一般的すぎたり、不明確だったりすると、混乱したり、焦点が定まらなかったりすることがあります。目的・ねらいが簡潔かつ明確であることが重要です。
  2. 狭義すぎる、または具体的すぎる:目的・ねらいが細かすぎたり、具体的すぎたりすると、研究の範囲が限定され、意味のある結論や示唆を導き出すことが難しくなる場合があります。
  3. 野心的すぎる:高い目標を掲げることは重要ですが、目的とねらいが野心的すぎると、非現実的な期待につながり、研究プロジェクトの制約の中で達成することが難しくなる可能性があります。
  4. 整合性に欠ける:目的・ねらいは、研究するリサーチクエスチョンと直接結びついている必要があります。そうでなければ、研究プロジェクトに一貫性がなくなってしまう恐れがあります。
  5. 実現可能性に欠ける:目的・目標は、時間、予算、リソースなど、研究プロジェクトの制約の中で達成可能なものとすべきです。実現可能性を考慮せずに目的・ねらいを立ててしまうと、研究の質が損なわれる可能性があります。
  6. 倫理的配慮がなされていない:目的・ねらいは、研究参加者の安全や安心の確保など、倫理的な配慮がなされている必要があります。
  7. すべてのステークホルダーの関与が欠けている:目的・ねらいが適切かつ関連性を有していることを確認するため、参加者、監督者、資金提供機関など、関係するすべてのステークホルダー(関係者)を関与させることが重要です。

こうしたよくある落とし穴を避けるためにも、具体的、明確、適切、かつ現実的な研究目的とねらいを立てるようにすることが重要です。同僚や上司にフィードバックを頼み、目的とねらいが研究課題、リサーチクエスチョン、方法と整合しているか、研究プロジェクトの制約の中で達成可能であるかを確認しましょう。目的・ねらいは継続的に改善・修正することが大切です。研究を進めるうちに、研究のねらいが少しずつ変化していくことは珍しくありませんが、実施した研究やテーマとの整合性を保つことが重要なのです。

研究の目的とねらいは、研究プロジェクトを成功させるための背骨に当たるものです。目的とねらいを固めることで、不要なことを排除し、本当に重要なことに焦点を絞ることができます。到達点を明確にし、リサーチクエスチョンや方法と整合させることで、適切でインパクトがあり、最高品質な研究となるようにします。繰り返しになりますが、研究の旅に出る前に、目的地を定め、そこに至る道筋(ステップ)を確認してください。目的とねらい、2つの違いに注意して、より良い旅をしてください。

英文校正はエナゴまで


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