研究を推進する

研究者のためのイラスト作成ツール

報告書や論文を書くことは研究業務の大きな部分を占めるものです。研究者は、ほとんどの時間を研究自体か研究について書くかに費やしています。 研究者が論文を書くのは、仲間や学術関係者あるいは一般の人々など、さまざまな読者に自分の研究内容を伝えるためですが、論文や報告書には普段あまり意識していない別の要素を含めることも必要です。それは、科学的な図表やイラストです。報告書や論文を読んだことのある人なら誰でも目にしたことがあるであろう、イラスト、図表、グラフ、インフォグラフィックは、研究のアイデアを明確に示すための貴重なコンテンツです。デジタル技術やグラフィック機能の進歩により、見た人に興味を持ってもらえ、わかりやすく内容を伝える科学的なイラストを簡単に作画できる優れたツールが入手できるようになっています。 この記事では、研究のアイデアや内容をより良く提示するために、詳細かつ有用なイラストを作成する方法を見ていきます。研究者が科学的なイラストを作成するのに便利なツールも紹介しますので、是非参考にしてみてください。 科学的なイラストの作成 科学的なイラストを作成するには、まずそのテーマを明確にすることから始めます。何かを描き出す前に、何を描こうとしているのか具体的にイメージしておく必要があります。 まず対象を部分ごとに分けて観察し、最適な表現方法を考えることが役立ちます。必要な情報がすべて揃ったら、紙に下絵を描いていきますが、この作業は、論文を執筆する際にアウトラインを作成するのと同じようなものだと考えれば良いでしょう。デジタル・イラスト作成ツールを使い始める前に、自分のイラストをどのように見せたいかをよく考えておきます。 イラストを作成するときは、ターゲットとする読者を念頭に置くことも大切です。そのイラストを、研究内容を理解している研究仲間や他の研究者に向けて作成するのか、それとも一般の人々に向けて作成するのか――対象を定めることで、どのような情報を盛り込み、どのような情報は省いてもよいかが明確になります。 デジタルツールに頼る前に、科学的なイラストの目的は、新しい資料を紹介することではないと覚えておいてください。 科学的なイラストや図解は、論文の情報を読者に分かりやすく提示するために使うものですので、研究の題材を分かりやすく示すものでなければなりません。例えば、閉塞した心臓の動脈にステントを挿入して広げる処置について図解するのであれば、主要な構成要素を示し、ステントの機能を強調したイラストを作成するようにします。 ここで留意しておきたいのは、科学的なイラストには大きく分けて以下の3つがあり、用途によって使い分ける必要があるということです。 平面図や地図、簡単な線図、視覚的な説明図 対象を正確に描写しつつ、色や模様など特定の表面的なディテールを取り入れたイラスト 上2つを含むが科学的な視点よりも美的な視点を重視したイラスト 科学的なイラスト作成デジタルツール どのようなイラストを作成するかのアイデアが固まったら、次はデジタルツールを利用してみます。ほとんどの研究者は、MicrosoftのPower…

コンセプトペーパーとは?~構成要素と書き方のポイント~

コンセプトペーパーは、学術研究やその他の分野においても、本格的なプロジェクトの計画書を作成する前に、取り組もうとしているプロジェクトの概要を説明するための重要な文書です。コンセプトペーパーの特徴や意義を理解することは、研究のための強固な基礎を築くことを目指す研究者にとっても非常に重要です。 今回は、学術研究におけるコンセプトペーパーとはどのようなものか、その構成と書き方のポイントを解説します。 コンセプトペーパーとは コンセプトペーパーとは、研究を実施するための承認申請や、助成金申請を行う際、研究の基本的な内容を概説する簡潔な文書です。取り組もうとしている研究プロジェクトの当初のアイデア、目的、理論的枠組みに関する説明を、数ページ程度の長さにまとめるのが一般的です(修士や博士課程で書く場合と助成金申請で書く場合などによっては長さが異なるので、指定の書式を確認するようにしてください)。研究計画書のように特定の研究の詳細な計画や方法論を書く必要がなく、原著論文のように完璧な研究プロジェクトの結果や分析の記載も不要である点がコンセプトペーパーの特徴です。基本的なアイデア、対象とするリサーチクエスチョン、研究の指針となるフレームワークを紹介することに主眼を置いて作成します。 コンセプトペーパーの目的 ビジネスにおいては、正式な提案書を提出する前に、上長らの承認や賛同を得るためにプロジェクトの目的や想定される成果について説明するいわゆる「企画書」がコンセプトペーパーに該当しますが、学術研究では、実施を予定している研究のプロジェクトの概要や研究の目的、実施方法について説明するための文書としてコンセプトペーパーが作成されます。コンセプトペーパーを書くことで、研究の方向性を明確にし、一貫性を持たせるためのロードマップの役割を果たすだけでなく、非公式に意見を聞くためのツールとしても活用できます。所属部署などにおける意思決定、承認、共同研究者からの参加の約束などを得るために使用され、関係者間での意思疎通を促進し、共同研究において私的なやりとりよりもフォーマルかつ丁寧なコミュニケーションをはかるツールとして機能するものです。 つまりコンセプトペーパーとは、研究の中核となる目的、理論的裏付け、潜在的な方法論に焦点を当てる助けとなるものであり、これを作成することによって、研究者は詳細な研究に取りかかる前に、フィードバックを得てアイデアを洗練させることができるのです。 コンセプトペーパーの主な構成要素 コンセプトペーパーの主な構成は、タイトルページ、背景説明、文献レビュー、問題提起、方法論、タイムライン、参考文献リストなどです。コンセプトペーパーは、助成金の申請において、提案する研究の妥当性と実現可能性を評価するのにも使われるので、研究者にとっては極めて大切なものです。 学術研究において効果的なコンセプトペーパーを書くには、必要不可欠な要素を理解し、それらの情報を上手く取り入れることが必要です。 上手く構成されたコンセプトペーパーは、上に挙げた要素をまとめ、提案する研究の概要を明確かつ包括的に概説し、研究テーマへの深い理解と、研究を実行するための構造化された計画を示すことができます。 コンセプトペーパーの書き方 コンセプトペーパーを効果的に仕上げるには、魅力的な研究テーマを選び、多数のリサーチクエスチョンを投げかけ、プロジェクトの根拠を裏付けるデータや数字を盛り込むことをお勧めします。内容を調整し、書式要件に従って簡潔な文書(長くても)に整える必要があります。さらに、インフォグラフィックや科学的な図解を用いれば、インパクトを高め、内容を読者に分かりやすく伝えることができます。以下にコンセプトペーパーを書く手順を記します。 1.簡潔なタイトルをつける 主要なアイデアを要約した、明確で説明的なタイトルをつけます。タイトルはペーパーの内容を直接的に表現するものである必要があります。読者に対してペーパーのプレビューとしての役割を果たします。…

AffectとEffectの違い:どう使い分ける?

投稿前に何度も原稿を見直したはずなのに論文で「その指標が器官に与える影響(effect of the indicator on the system)」と書くべきところを、「器官内で影響を受けた指標(the affected indicator on the system)」と書いてしまった、という経験をお持ちの人はそれほど多くないかもしれませんが、「affect」と「effect」は紛らわしいですね。 しかし紛らわしい英単語の意味や使い方をしっかりと把握し使い分けられるようになることが、研究者が研究成果を正しく世界に発信する上で欠かせません。 英語の中でもとりわけ混同される2つの単語-「affect」と「effect」 アカデミックな英語の中には、英語がネイティブでない読み手だけでなく、ネイティブスピーカーたちをも混乱させるような表現が少なくありません。…

盗用・剽窃の8つの種類

論文発表における盗用および剽窃とは、他人の研究に関する考え方や文章を許可なく使用し、自分の著作物・論文の一部として発表することです。残念ながら、盗用・剽窃は、研究において目新しい問題ではありませんが、盗用・剽窃を検出できるソフトなどの出現により見つけ出すことが容易になったため、より注目されるようになりました。   盗用・剽窃には偶発的なものから悪質な不正行為まで様々なタイプがあります。意図したものはもちろん、意図しないものも許されませんが、すべての盗用・剽窃が不正行為かどうかと、その重要性を分析する際には、どのような盗用・剽窃なのかの判断が必要です。だからこそ、大学のような教育機関において盗用・剽窃に関する知識を学び、その重要性を知った上で対策を講じることができるようになることが重要です。この記事では、基本的な8種類の盗用・剽窃を紹介します。 盗用・剽窃の種類 盗用・剽窃の問題は昔からありますが、近年は、インターネットが普及したことでこの問題が一層表面化してきました。きちんと引用すれば盗用・剽窃とはみなされないのですが、意図的に行う盗用・剽窃は犯罪です。さまざまな盗用・剽窃の種類と、それらがどのように発生するかを考慮し、研究倫理上も重大な問題であると理解しておくことが非常に重要です。その上で、非倫理的行為を行ったと指摘、非難されるのを避けるための対策を講じなければなりません。 完全な盗用・剽窃 完全な盗用・剽窃とは、他の研究者の研究や原稿を、自分の名前で投稿するという最も悪質なものです。これは、知的財産権侵害に相当します。ネットで見つけたものをコピーする、誰かにお金を払って論文を書いてもらう、自分あるいは他者が何年も前に提出した古い論文を再投稿することなども含まれます。 ソースベースの盗用・剽窃 ソースベースの盗用・剽窃とは、存在しない、あるいは虚偽の出典を参照する行為です。ソースベースの盗用・剽窃は、出典の種類が異なることでも起こりえるので、判断が難しいこともあります。例えば、研究者が誤って、間違った情報源や存在しない情報源を引用した場合、読者に誤解をもたらすことになります。意図的であろうとなかろうと、出典を完全かつ正確に引用していなければ、盗用・剽窃となります。 また、研究者が二次的なデータや情報源を参照したにも関わらず、二次的な情報のなかに示されている一次的な情報源のみを引用して二次的な情報に言及しない場合も、盗用・剽窃に該当することになります。このタイプは、単なる見落としやミスということもありますが、意図的に参考文献リストを補強したり、引用文献の数を増やしたりすることも含まれています。 ソースについてさらに言えば、データの捏造と改ざんも盗用・剽窃の一種類です。データの捏造とはデータや研究結果をでっち上げることであり、データの改ざんとはデータを変更したり省略したりして誤った印象を与えることです。特に医学研究の場合、こうした盗用・剽窃がもたらす結果は、臨床判断に悪影響を及ぼす可能性があるため、重大です。 直接的な盗用・剽窃 完全な盗用・剽窃と似ていますが、直接的な盗用・剽窃とは、コピペ盗用とも呼ばれるように、他人の言葉や文章をそのまま引用符も使わず、発言者の断りも書かずに(帰属表示なしに)一字一句そのままコピーし、自分の創作として利用してしまうことです。二つの違いは、完全な盗用・剽窃が文章全体を使用するのに対し、直接的な盗用・剽窃は他人の作品の一部をコピーペーストすることです。特定の段落や文章をコピーすることもあります。いずれにせよ不正行為とみなされ、勧告や厳しい処分を受けることになります。 自己盗用・自己剽窃 自己盗用・自己剽窃とは、著者が以前に発表した自分自身の論文のかなりの部分を帰属表示なしに再利用する場合に起こる盗用・剽窃の一種です。また、ひとつの論文を複数の学術雑誌(ジャーナル)に投稿する二重投稿も自己剽窃の一種とみなされます。そのため、このタイプの盗用・剽窃は、学生よりもむしろ、出版経験のある研究者がやりがちですが、既に出版されている論文を新しいもののように主張することは、研究倫理的な違反となります。…

調査研究に適した統計的仮説検定を選ぶ際の7つの重要項目

実験などから得られたデータの統計処理を行う場合、どの統計手法を用いればよいのか、この方法でよいのか分からないということも多いと思います。統計的仮説検定の選択を誤ると、研究結果への信頼性に疑問を持たれたり、論文が不採用にされたりすることになりかねません。この記事では、母集団の分布の型(パラメトリック/ノンパラメトリック)の違いから、統計的仮説検定の手法を選択するために重要な項目について解説します。 統計的仮説検定とは 統計検定(hypothesis testing)、あるいは統計的仮説検定(statistical hypothesis testing)とは、ある仮説が正しいのか否かを統計学的に検証する方法です。2つのデータセットが互いに有意に異なるかどうかを数学的に検定するもので、母集団分布の母数に関する仮説を標本から得た情報(データ)に基づいて統計学的な方法で検証し、対象となる変数の母集団に関する条件になんらかの差があるといえるかどうかについて確率論的な分析を行うものです。統計的仮説検定では、平均、標準偏差、変動係数などいくつかの統計的尺度を用いて計算し、それらをあらかじめ決められた基準のセットと比較します。もしデータが基準を満たせば、2つのデータセット間に有意差があると結論づけることができます。 分析するデータの種類によって、使用できる統計的仮説検定は異なりますが、一般的な手法としては、t検定、カイ二乗検定、分散分析(ANOVA)などが挙げられます。 統計的仮説検定の種類 統計的仮説検定にはいくつかの手法があり、解析の種類 や母集団の分布などに適した手法を選択する必要があります。最初に母集団のデータ分布を事前に仮定している(パラメトリック検定)か、仮定していない(ノンパラメトリック検定)かを大別して、解析の種類を狭めていきます。 1.パラメトリック検定 パラメトリック検定とは、データの母集団が何らかの分布に従っていると仮定している場合に用いられる検定手法です。分布を決める際の重要な要素(パラメータ)を持っており、事前にデータの分布が仮定できるものに用いられます。特定の分布に従っていると想定できる観測値(データ)に対して実施することで、データの分布が想定したモデルと一致しているか否かを主張する際の定量的な根拠となります。一般的なパラメトリック検定としては、回帰分析、比較分析、相関分析が挙げられます。 1.1.回帰分析 回帰分析とは、データにおける関係性や影響力を調べる統計的な手法で、主に原因と結果の関係を推測する際に利用されます。回帰分析には、単回帰分析と、その応用ともいえる重回帰分析、さらにロジスティック回帰分析があります。 単回帰分析は、従属変数と独立変数の間の関係を直線で示すもので、2つの量的変数の関係、つまり目的の変数に対して説明の変数がどのように影響を与えているかを示す式(回帰式)を導き出されます。…

【寄稿記事】生成AIがあれば、人間による英文校正は必要ないのか?

今回は、バイアスのない公平かつプロフェッショナルな視点で生成AI登場後の英文校正の必然性というテーマを考えるため、水本篤教授(関西大学 外国語学部・外国語教育学研究科 教授)にご寄稿をいただきました。水本教授のプロフィールは記事の末尾からご覧いただけます。 私は外国語教育(特に英語教育)を専門とする研究者です。テキストを大量に収集し、データベース化した言語資料「コーパス」を用いた教育が研究テーマです。これまでに、英語論文執筆サポートツール(https://langtest.jp/awsum/)を開発したり、多様な分野の研究者に対して、コーパスを活用した英語論文執筆のテクニックを教えるワークショップやセミナーを実施してきました。 他の分野で活躍する研究者と交流する中で、多くの方が「英語論文の執筆にかかる時間を減らし、研究内容に専念したい。しかし、英語で論文を書くと大量の時間が必要で困っている」と口を揃えて言います。実際に、英語が母国語でない研究者が研究を行う際、英語は大きな障壁となることが Amano et al. (2023) によって数値で示されています。 自分自身の例でいうと、英語教育に関する研究を長年行っており、英語で論文を書くことも継続しているため、自分自身の専門知識と英語の運用能力は高いと自負しています。しかし、英語で論文を書くたびに、伝えたいことが完全には伝わっていないと感じ、これがいつまでもつらいのです。 今回は、「生成AIがあれば、人間による英文校正は必要ないのか?」という疑問について、言語教育の専門家として考察します。一部の人々は、「生成AIが存在する現在、人間による英文校正は不要だ」と極言しています。その結果、生成AIの学術論文執筆への適用に関する情報には非対称性が存在し、「真実は何かわからない」と感じている方も多いでしょう。 まず、「生成AIがあれば、人間による英文校正は必要ないのか?」に対する私の答えは「Yes and No」です。専門分野の英語論文を多数執筆してきた方で、自分の分野の論文の英語表現に自信を持っている方は、生成AIを使った英文校正でも十分に論文を完成させられるでしょう。英文校正会社に原稿のチェックを依頼すると、高価であったり、納期まで数日必要だったり、校正の品質が不均一であったりする問題があります。しかし、専門知識が豊富で、かつ英語運用能力が高い方にとっては、これらの問題を考慮する必要がありません。…

論文で仮定法“if-then”を使うときの注意

英文法で「仮定法」を学んだとき、「もし~ならば、~であろう」と訳すように習ったifを使った条件文に「仮定法」と呼ばれる動詞の活用が入ってきた途端に英文法につまずいたという経験をした人も少なくありません。 条件文とは、"if-then "または "unless-then "で書き表すような状況(実際には"then "と書かれずに具体的な状況を説明する文言が入る場合が多い)、あるいは起こりそうな状況・出来事を表す文です。ある条件における状況や起こりうる結果を示すもので、研究論文の中でも、調査研究の結果について論じるときや、仮説文の一部として条件文がよく使われます。ifを使った文章において仮定法はConditionalと呼ばれ、表現する対象の違いによって4種類に分けられています。ここでは、その4種類に混合型を加えた5種類のConditionalを概説します。 多くの場合、ある状態およびその条件下で得られる結果を述べるのには条件文が必要です。科学論文の著者の多くは、要約(アブストラクト)の中で、研究を実施する理由を論じるために条件文を使っています。条件文を正しく組み立てることは重要ですので、まずはその違いを理解しておきましょう。 条件(Conditional)の種類 条件文は、if節(またはunless節)と主節の2つの節を使って構成されます。以下に説明する5つの条件(Conditional)は対象が異なるので、それぞれの使い方を理解しておくことが重要です。あるConditionalは、一般的な真理に言及し、他の条件文は仮定の状況に言及するというような違いがあるので、例文を読み比べてみてください。いずれの種類の文章でもif節と主節の順序の入れ替えが可能ですが、if節が冒頭に来た場合には、主節の前に「,(コンマ)」を入れます。また、ここでは否定の例文を挙げていませんが、if節で否定的な条件を表わしたい場合には、if+notの変わりにunlessを使うことができます。 5つのConditional ・Zero Conditional Sentence (普遍的な状況を表す仮定法で書く、必ず起きる状況が対象) ・First…

インタビューを研究に用いることの重要性とその進め方

研究の一環として実施する調査は、さまざまな学術的、科学的、専門的なデータ収集において、極めて重要な役割を果たすものです。研究者は、インタビューを通して個人の考えや経験、視点を深く掘り下げる機会が得られることで、複雑な現象を包括的に理解することが出来るようになります。学術研究を進める上で、特定の題目について効果的で洞察力のあるデータ収集方法を考えることは大変重要です。この記事では、質問者(研究者)が対象となる回答者に質問することで特定のテーマに関する一次情報(データ)を収集するための定性的な手法であるインタビューについて、その特徴と進め方についてお伝えします。 最初に、インタビューの3つの主な要素を挙げてみましょう。 インタビューの3つの重要な要素 Flexibility 柔軟性:研究者は、参加者の回答に基づいて質問を調整しながら調査を進めることで、新たな分野を探求することができる Elaborative 精巧さ:参加者はインタビューの間に自分の回答や複雑な考えを明確に伝えることができるので、誤解が生じる可能性が低くなる。また、研究者は参加者の回答のニュアンスや欠落している要素を容易に確認することができる Contextual Understanding 文脈の理解:インタビューを行うことで、参加者の経験や視点に影響を与えている文脈的要因を捉えることができる。研究者は、個人の見方を形作る社会的、文化的、環境的要因を探ることができる 一次情報(データ)収集におけるインタビューの重要性 直接情報を入手するという役割においてインタビューはとても重要な手段です。インタビューを行うことで研究者は参加者と直接対話する機会を得られるので、偏見のない一次情報(データ)を収集することができます。 1.主観的経験 インタビューは、を深く掘り下げるのに役立ちます。研究者が参加者と直接会話をすることで、参加者の経験、視点、意見のニュアンスや複雑さを掘り下げることができます。インタビューを行うことで、他の方法では難しい、研究対象の包括的な理解が可能になります。また、インタビューは、参加者自身によって語られるものなので、主観的な経験を捉えることができるという特長も備えています。参加者から自分の考え、感情、信念を直接聞くことで、調査結果に深みを増すことができるのです。 2.個人的な洞察…

転換語(transition words)の役割と種類:効果的な使い分け方

論文とは知識の交換のためのツールであり、正確かつ包括的に情報を伝達するために、考えを明確に伝えることが求められます。批判的な考えや分析、総合的な見解などを文章にまとめて発表することにより、研究者は各自の研究分野にとって有意義な貢献をすることができるのです。著者は、論文を執筆する際、文中に適切な比喩や隠喩を用いることで、自らの専門的技能の意義をよりよく理解し、学術界に有意義な貢献をするために技能を磨く努力をすることができますが、メリハリの良い文章を作成するには、それぞれの文の繋ぎ方にも注意が必要です。話の内容を変えたい、強調したいといった場合には、転換語(transition wordsまたはtransitional words)を挿入して話題を変えたり、具体例をつなげて説明を補う必要があります。この記事では、論文執筆における転換語の役割と、効果的に転換語を取り入れることで説得力のある文章を作成するために知っておくべき転換語の種類を解説します。   転換語とは 転換語とは、文またはパラグラフで話題を転換する際に使う単語やフレーズ(転換表現)のことです。研究論文のようなアカデミック・ライティングでは、論理的な情報の流れが非常に重要なので、内容の流れを分りやすく、かつスムーズにつなげる必要があります。文や段落のはじめに挿入される転換語は、趣旨の異なる前後の文章の関係を表す橋渡しの役割を果たします。さらに、文章の流れを作り、論理的に展開するのを助け、全体的な読みやすさを向上させることで、文章に一貫性とまとまりを持たせるのに役立ちます。 1. Additionally:情報の追加や参照するときに挿入 例文)Additionally, recent studies have demonstrated similar findings,…

統計における母集団とサンプルの違い

調査研究における母集団(population)と標本またはサンプル(sample)は、あらゆる科学的探究の基礎となるものです。データに隠された謎を解き明かすには、研究対象における母集団とサンプルを理解することが非常に重要です。母集団とサンプルの間の関係性を理解することによって、研究結果の妥当性、信頼性、一般化の可能性が確保されるのです。この記事では、研究における母集団とサンプルそれぞれの意味と違いを明らかにした上で、サンプリングの手順についても概説したいと思います。調査統計における母集団とサンプルについて理解が深まり、研究者が情報に基づいて結論を出すのにこの記事がお役に立てれば幸いです。 母集団(Population)とは 研究調査の対象となる集団全体は、母集団と呼ばれます。研究者が結論を導きだそうとして統計的な調査を行う際の対象全体であり、特定の特徴、数値、属性等のある個人、対象物、または事象の全体または集合体を指します。この母集団から抜き出された対象の一部(部分集団)が、サンプル(標本)です。研究対象となる母集団は、研究目的と調査中の特定のパラメータまたは属性に基づいて定義されます。例えば、新薬の効果に関する研究の母集団には、その薬の恩恵を受ける可能性のある、または薬の影響を受ける可能性のあるすべての個人が含まれます。 母集団からのデータ収集 集団全体を包括的に理解する必要がある場合、集団からデータを収集しなければなりません。以下に、データ収集を行う事例を挙げます。 1.少人数または調査しやすい集団からのデータ収集 調査母集団が少人数の場合、または調査しやすい(対象へのアクセスが可能な)場合には、母集団全体からデータを収集することが可能です。特定の組織、小規模なコミュニティ、または大きさの管理が可能な母集団のように、明確に定義されたグループ内で実施される研究でよく行われる手法です。 2.国勢調査または全数調査 政府による調査や公的統計など、国勢調査や全国的な調査が必要な場合には、集団内のすべての個人または実体データを収集することを目的とした調査が行われます。状況を正確に把握し、サンプリングエラーを排除するために行われるのが一般的です。 3.特異的または重要な特性を調査するためのデータ収集 希少かつ研究にとって重要な特定の特性や特徴に焦点を当てた研究を行う場合、集団全体からのデータ収集が必要となることがあります。希少な疾患、絶滅危惧種、特定の遺伝マーカーに関連する研究等が挙げられます。 4.法的または規制上必要となるデータ収集 法律や規制の枠組みによっては、全住民からのデータ収集が必要な場合があります。例としては、行政機関が、政策立案や資源配分を行う目的で、所得水準、人口統計学的特性、医療利用状況などに関する包括的なデータを必要とする場合が挙げられます。 5.精度または正確さを把握するためのデータ収集 高精度または正確さが必要な場合、研究者は集団レベルのデータ収集を選択することがあります。集団レベルのデータ収集を行うことによって、サンプリングエラーが生じる可能性を軽減し、より信頼性の高い母集団パラメータの推定値を得ることができます。…

研究の選択バイアスを軽減する10のヒント

学術研究では、真実を明らかにするための注意深い目と客観性を確保するための揺るぎない意思が不可欠ですが、本人も気づかないバイアスは、どのように注意すればよいのでしょうか。 成功事例だけが注目されて語られ、失敗事例は記録されずに顧みられることもない―これはsurvivorship bias(生存者バイアス、または生存バイアス)と呼ばれる選択バイアスの一種で、学術研究でも生じうるものです。生存者バイアスは、洞察力をにぶらせ、理解をゆがめてしまう恐れがあります。特定の行動において成功することが当然で、その結果が保証されているかのような思い込みを植え付け、失敗事例の有用なデータを隠してしまうのです。こうなってしまうと、誤った結論、誤った決断に至りかねません。本記事では、学術研究における生存者バイアスについて探求し、その広範囲に及ぶ意味を探り、研究に与える7つの影響と、バイアスの落とし穴をうまく切り抜けるための10のヒントを紹介します。 生存者バイアスとは 生存者バイアスとは、あるプロセスや出来事の「生存者」のみを基準に判断し、生存(成功)しなかった人や事象を無視したときに発生する選択バイアスの一種です。このバイアスの名前は、「生き残った」つまり、選択を通過できたデータだけに焦点を当て、「生き残れなかった」データを無視したときに発生するエラーに由来しています。成功事例のみに注目し、失敗事例(生存していないデータ)を顧みないことによって、不完全で歪んだ結果の考察を導き出してしまうのです。このバイアスは、ビジネス、金融、歴史、そしてもちろん学術研究など、さまざまな領域で散見されます。研究者がこの生存者バイアスの影響を軽減するためには、多様な視点やデータを積極的に分析に取り入れる必要があります。 研究における生存者バイアスの影響 生存者バイアスは、事実の認識を歪め、誤った結論を導く可能性があります。失敗例や不成功例を見落とすことで、リスクを過小評価したり、成功の可能性を過大評価したり、さらには誤った仮定や方策を採用したりすることにつながりかねません。生存者バイアスを軽減・回避するためには、生存者と非生存者の両方に目を向け、極端な事例だけでなく、結果の分布全体を分析することが極めて重要なのです。 研究における生存者バイアスの例 ヘルスケアおよび医学研究における生存者バイアスの例を見てみましょう。治療や介入に成功した患者のみに焦点を当ててしまう生存者バイアスは、その医学研究に影響を与える可能性があります。生存者バイアスは、疾病診断、その中でも特に診断後の生存率を調査する際に見られます。例えば、重篤な診断をされてからの患者の生存率を見た時、診断後まもなく患者が死亡した場合、その患者は調査対象者数に含まれないので、見かけ上、生存率は高くなります。一般的に若く、体力もあり、良好な既往歴などといった因子を持つ患者(被験者)は予後が良好で、こうした因子を持たない患者と比較すると高い生存率を示す傾向にあります。しかし、病気の診断後から一定期間のみを切り取った生存率の計算では、死亡した患者が除外されるケースが多く、結果として実際の確率より健康な人の割合が過剰になってしまうのです。 COVID-19のような世界的なパンデミック事象の場合、ウイルスの影響を正確に評価することは困難です。疫学者や医療専門家は、生存率の計算だけに頼っていては包括的な把握ができないことに注意を促しています。例えば、COVID-19の検査を受けずに死亡した人は、ウイルスに関連した公式の死亡者数に含まれません。このことがCOVID-19感染者の生存率を分析する上で偏りをもたらす可能性は捨てきれません。特に、検査能力やインフラが圧倒的に不足している国では、データが不完全になり、生存率の計算に歪みが生じる恐れがあります。 「生存者バイアス」の例として最も有名なのは、第二次世界大戦中の軍用飛行機の話 でしょう。第二次世界大戦中、コロンビア大学の統計学者アブラハム・ウォルドと彼の研究チームは、軍用飛行機の研究で生存者バイアスの興味深い例に遭遇しました。彼らの任務は、敵機に打ち落とされないように飛行機の装甲を補強することでした。その任務達成のために帰還した飛行機の損傷箇所を分析し、そのデータから機体の補強箇所を提案することがミッションでした。最も損傷を受けた箇所を補強することは、一見合理的なように見えますが、ここに生存者バイアスが潜んでいます。 ウォルドは、撃墜され、帰還できなかった飛行機を無視して、無事に帰還した飛行機の損傷部位だけを考慮したのでは生存者バイアスがかかってしまうことに気づきました。この発見は、彼らのアプローチを変えることにつながり、ウォルドは、帰還した飛行機の損傷が激しい部分は、むしろ、その箇所に被弾しても帰還が可能だったのに対し、急所となる部位を損傷した飛行機は撃墜されてしまったと気づきました。ウォルドはこのバイアスを考慮し、データで過小評価されていた部分、具体的にはモーターとコックピットの周辺を補強することを提案しました。これらの急所に被弾した飛行機は撃ち落とされて帰還できなかったので、その機体の損傷箇所のデータは含まれていなかったわけです。よって、生存者バイアスを考慮した上で必要な部位を強化することにより、本当に必要な補強を施した機体ができました。 生存者バイアスは学術研究においてもいくつかの重大な影響を及ぼし、調査結果の妥当性と信頼性を損なう可能性があります。以下は、生存者バイアスが研究に与える主な影響です。 1.結論をゆがめる:生存者バイアスは、相関関係と因果関係についての基本的な誤解から生じるものなので、生存者バイアスがかかると結論がゆがめられ、事実が誤って伝えられることになりかねません。生存者や成功事例のみに注目することで、研究者は不正確な結論を導き出したり、研究対象の集団や現象全体について不当な主張をする恐れがあります。 2.理解不足をまねく:生存者バイアスにより、研究対象に対する理解が不完全になる可能性があります。非生存者や想定範囲外の結果を除外することで、結果に変化をもたらす根本的なメカニズムや要因に関する洞察につながる重要なデータを見逃すことにつながりかねません。…

ChatGPTに「できない」9つのこと

急速に広まっているChatGPTですが、万能というわけではありません。ChatGPTは、アメリカのOpenAI社が2022年11月に公開した対話型AIサービスです。チャットで質問したことに対し、膨大なデータから情報を収集して答えてくれるわけですが、GPTが「Generative Pre-trained Transformer」の略であることからも察せられるとおり、回答を出力するためには事前学習(pre-training)が必要です。2023年6月時点での普及モデルGPT-3.5の事前学習データセットが2021年9月までのものであるため、2022年以降の情報が含まれていないことが指摘されていますが、プラグイン機能を追加することでChatGPTが新しい情報にもアクセスできるようにするといった対策や、深層学習アルゴリズムを使ってインターネット上の大規模なデータセットから情報収集した後に後学習(post-training)することで微調整を行ってから出力する機能の開発なども進められています。ChatGPTは、日々進化を続けている一方で、誤った情報に基づく誤った回答が出力される危険性も含め、使用の際には注意が必要です。 ChatGPTやその他の生成AIツールを使うことで調べ物の時間を短縮したり、テキストを作成させたりできるといった利便性が注目されていますが、研究者がChatGPTを使う際には、ChatGPTが「できないこと」、つまりAIツールの限界を知っておく必要があります。ここでは、研究活動においてChatGPTができない9つのことを取り上げます。 ChatGPTができない9つのこと 1- 独創的な研究アイデアの発案 独創的な研究アイデアは科学の進歩の原動力であり、イノベーションを生み出し、知識を広げ、画期的な発見への道を開くものです。、ChatGPTは研究アイデアを作成することはできません。 試しにChatGPTに化学分野の研究における独創的な研究アイデア/テーマをいくつか提案するよう入力したところ、この分野では基本的な3つの既存の研究について出力してきました。以下がその際の画面(スクリーンショット)です。 ChatGPTのアルゴリズムには、独自の批判的な分析能力がないので、情報の正否は判断できません。 ChatGPTが分野に特化した専門知識を習得し、最新の動向を把握しているわけではありませんし、各分野独自の複雑な内容を深く理解しているわけではありません。 研究者の専門的知識は、研究を進めるべき方向性を特定し、既存の知識を基に革新的なアプローチを提案し、その分野を発展させることができます。一方、ChatGPTには、人間の研究者のような豊富な知識の集積や経験はありません。 AI言語モデルをベースとするChatGPTの能力は、既存のトレーニングデータに制限され、生き生きした会話や協業に積極的に参加する能力は有していません。 2- 複雑なデータ分析の解釈…

研究の目的とねらい―研究を成功に導く2大要素

目的地を決めずにドライブしている自分を思い浮かべてみてください。なぜ運転しているのか、どこに向かっているのか―、どうやって目的地に到達しようとしているのか―不安になってきませんか?同じように、研究を順調に進めるためには、研究目的とねらいを明確にする必要があります。研究の目的とねらいは、あらゆる研究プロジェクトの基礎となるものです。研究の明確な方向性と目指すべき到達点を掲げることで、研究プロセスを通じて集中力を維持し、研究を軌道に乗せることができます。目的とねらいは、研究を成功に導く、信頼できるナビゲーション・ツールなのです。 研究プロジェクトの成功のためには、研究目的とねらいの関係性を理解することが重要です。この記事では、目的とねらいの重要性を探り、その違いを理解し、研究の質に与える影響について掘り下げていきます。 研究の目的とねらいの違い 研究において、目的とねらいは2つの重要な要素ですが、たびたび同じ意味で使用されているのが見受けられます。この2つは似ているように見えて別のものであり、目指すところも異なります。 研究の目的 研究目的とは、研究の全体で「目指すもの」を説明する広義な記述です。研究の全体的な方向性を示し、研究を行うことで成し遂げられることを示します。研究目的は、研究が最終的に目指すことを一般的かつ抽象的な記述で示します。 研究のねらい 研究のねらいとは、特定の時間枠内で達成することを目指した、具体的で測定可能、かつ達成可能な“めあて”のことです。研究目的をより詳細に、管理しやすい構成要素に分解し、何を達成したいのか、どのように達成するのかを明確にします。 この例におけるねらいは、目的を果たすために達成しなければならない具体的な目標を示しています。基本的に、目的は研究の全体的な方向性を示すものであり、めあては目的を達成するために成し遂げなければならない具体的なステップやタスクを示すものです。つまり、目的は研究の大まかな方向性を示し、研究の目的を達成するために研究者がやらなければならない小さなマイルストーンを示しています。例えるなら、ドライブ旅行を計画するとき、研究の目的は到達したい目的地であり、研究のねらいはそこに到達するために必要な具体的なルートとなります。 目的とねらいは相互に関連しています。ねらいは、研究方法を定める上で重要な役割を果たし、どのようにデータを収集し、分析するかという道筋を示唆するものです。具体的な到達点を定めることで、研究の目標、ひいては研究の目的を達成するための研究計画を立てることができるようになります。 目的とねらいを明確にすることの重要性 研究目的・ねらいを明確に定めることが研究の質に与える影響は計り知れません。しかし、単に目的・ねらいを定めれば良いというものでもありません。研究の目的とねらいを明確にすることの重要性を以下に挙げておきます。 方向性を示す:目的およびねらいを明確にすることで、研究の具体的な方向性を示し、研究が着実に特定のトピックや問題に集中できるようにします。研究の幅が広がりすぎたり、焦点が定まらなかったりすることを防ぎ、研究の関連性と意義が保たれるようになります。 研究デザインの指針となる:研究の目的とねらいは、研究デザインと方法を考える上での指針となり、リサーチクエスチョンに対する答えを導きだし、研究の目標を成し遂げることを確実にします。 リソース配分に役立つ:研究の目的とねらいが明確であれば、時間、資金、人材、その他必要な資材などのリソースを効果的に配分することができます。研究を行うのに必要なリソースを特定し、効率と生産性を最大化する方法でリソースを配分するのに役立ちます。…

学術論文における「e.g.」と「i.e.」の使い方

文章の中でよく見かける略語で、通常は括弧の中にあり、その前後の文脈からだいたいの意味は把握できるようなものがありますね。そのひとつが「e.g.」です。これは、ラテン語の「exempli gratia」の略で、「例えば(for example)」という意味です。もうひとつよく見かけるのは「i.e.」で、これはラテン語の「id est」の略です。英語にすると「that is to say」や「in other words」、日本語の「つまり」といった意味合いです。文中で、あるポイントを強調するための例を挙げる際に「e.g.」を使うことや、一文でくどくどと説明するのではなく、言い換えて要点を述べるために「i.e.」を使うことは少なくありません。 しかし中には両者を混同して、間違って使う人もいます。ここでは、間違えないためのヒントと用例をご紹介します。 「e.g.」と「i.e.」の違い 上記のように、「e.g.」は 「for example」の略です。間違えないための簡単な方法は、「e」で始まるから「example」だと覚えておくことです。では「e.g.」の実際の文中での用例を見てみましょう。 “There…

記述的研究の攻略法

記述的研究(descriptive study)は、特定の集団や現象に関する情報を収集するために使用する強力な研究手法です。記述的研究とは、研究対象の「理由」に焦点を当てるのではなく、現象を説明することに終始する比較対象群をおかない調査研究の方法です。具体的には、症例報告やケースシリーズなどがこれに相当します。記述的研究の根幹である観察とデータ収集は、研究の主題の特徴や行動についてより深く、詳細に理解するのに役立ち、後続の研究のためにも貴重な洞察を提供します。 この記事では、記述的研究の定義、特徴、方法を踏まえ、質の高い研究成果を出すために避けるべき7つの失敗の攻略法を紹介します。経験豊富な研究者であれ、これから研究に取り組む学生であれ、科学研究を成功させるためには記述的研究の基本を理解することが不可欠です。 記述的研究とは 記述的研究とは、特定の現象の因果関係、つまり「理由」に焦点を当てるのではなく、与えられたテーマについて観察、データ収集を行うものです。記述的研究の目的は、研究対象の母集団や現象の特性を包括的かつ正確に把握し、データ内に存在する関係性、パターン、傾向を説明することです。 記述的研究の方法には、調査研究、観察研究、ケーススタディ研究(症例研究)などがあり、収集されるデータは質的・量的に関わらず多岐にわたります。記述的研究から得られた知見は、貴重な洞察を与え、将来の研究に役立てられますが、特定の現象が生じる因果関係を立証するものではありません。 記述的研究の重要性 1.母集団や現象の特性の理解 記述的研究は、特定の母集団や現象の特性や行動を包括的に把握することができるので、研究者はそのテーマについてより深く理解することができます。 2.基本的情報の入手 記述的研究によって集められたデータは研究の基礎となり、さらなる研究につながります。 3.情報提供(収集されたデータの活用) 特定のテーマに関する貴重な情報源となるため、将来の研究、政策決定、研究プログラムなどに洞察を提供し、広く役立てることができます。 4.多様なサンプリング方法の検証 記述的研究では、さまざまなサンプリング方法を検証し、研究に最適なアプローチを決定するために使用することができます。…

読むべき論文の選別・優先順位付けに文章要約AIツールを活用

研究者1:ノートPC開く度に大量の論文が届くんだ、勘弁してよ。 研究者2:なんでダウンロードするデータを分類しておかないの? 研究者1:やってるよ。でも、情報量がすごくて、どこから手を付ければいいのかわかんないよ。 どこかで聞いたような会話ですか?学術研究のデータの照合を始めたばかりの研究者によくある困りごとかもしれません。大量の情報が恩恵をもたらすことが多々ある一方で、研究論文に関連する情報過多は必要な情報を特定することを困難にします。必要な情報をすべて見つけ出せたとしても、どの論文を優先して読めばよいのか分らなくなることもあります。例えば、学術雑誌(ジャーナル)掲載論124本、書籍の中の該当する章27章、プレプリント論文45本、卒業論文内の章8章を一度にダウンロードしたとしても、すべてを読むにはどれほどの時間を要するか、見当も付きません。すべての研究論文をセクションごとに要約すれば、相当な時間短縮ができるでしょう。この記事では、研究者が自分の研究テーマに関連する情報源を見つけ出す方法と、研究記事をセクションごとに要約することで時間を有効に使う方法をご案内します。 ダウンロードした膨大な研究データを手作業で照合・要約するのは難しい 文献レビューを行う際には、複数の情報源からダウンロードされた大量のデータを利用し、関連するデータだけを使って最大の有用性を引き出すことが大切です。膨大な研究情報を照合し、管理するには、体系的なアプローチで取り組む必要があります。情報管理がうまくできれば、文献レビューの洞察を導き出し、読むべき論文の優先順位を付けるのに役立ちます。しかし、情報過多になってしまうと、論文の要約を行うどころか、研究データを管理し、分析する段階で混乱してしまうでしょう。 研究論文をセクションごとに正確に要約する秘訣は、要点を押さえることです。論文をひとつひとつ自力で要約するのは大変な作業です。要約するためには、論文を徹底的に読み込まなければなりませんが、すべての論文を最初から最後まで読み、注釈、小見出し、さらに参考文献にまで注意を払うのは途方もない作業です。しかも、重要なことが常に明白に書かれているとは限らないので、重要な点を見逃さないように各セクションを個々に読み進めなければなりません。研究が続く限り、この要約の作業は続きます。さらに、どの論文から読むかの優先順位を決めるには、入念に計画された照合作業と関連度に基づくデータの要約が必要です。 情報過多のほかにも、文献レビューの体系的なアプローチを妨げる問題は以下のようなものがあります。 選択バイアス:キーワードだけで、関連性のある情報と判断すべきではありません。 包括性の欠如:リサーチクエスチョンの理解があいまいで、誤った用語や関連性の低い用語で情報を検索するために発生します。 論文のエビデンス(証拠)を検証していない:証拠を検証しないと結論を誤る恐れがあります。 透明性/再現性の欠如:レビュー手法の再現性は、科学的方法論の中心となる基本的な考え方です。レビュー手法に透明性がなく再現できない場合には、信頼できると見なされません。 どの文献から読むべきかの優先順位の付け方 論文のタイトルだけでは、論文を読み進める決定打とはなりません。通常、研究者は、アブストラクト(要旨)、結果、結論を読んで、その論文をさらに読み進める価値があるか、研究テーマに関連性があるかを判断します。しかし、情報が氾濫している現在、今までと同じやり方をすると、時間と労力を費やすことになってしまいます。 大量にダウンロードした情報から適切な文献を見つけるのは時間と手間のかかる作業です。論文のアブストラクトと結論だけを読んで、その文献が有用な情報かの判断を下したいところですが、自分の研究テーマに関連する重要な情報が、論文のアブストラクトや結論のセクションに記載されているとは限りません。そこで、AIの助けを借りて読むべき論文に正しく優先順位を付けるための新しい技術が模索されるようになりました。AIが研究論文の重要なポイントを強調し、すべてのセクションを要約してくれるのであれば、読み落としの潜在的な解決策となります。この技術により、研究者は関連性のある文献だけを読めるので、時間の節約となるだけでなく、最も大切なことは、適切な情報を引用することが出来るようになります。…