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臨床試験データ、シェアされていても未活用のまま

デューク大学メディカルセンターのアン・マリー・ネイヴァー医師らのグループは、シェアされている臨床試験データがどのように活用されているかを調査、その結果を『JAMA(アメリカ医学協会ジャーナル)』3月22・29日合併号で「リサーチ・レター」として公表しました。

ネイヴァーらのグループは、臨床試験のデータを共有するためのプラットフォームとして、「ClinicalStudyDataRequest.com」、「Yale University Open Access Project (YODA)」、「Supporting Open Access for Researchers (SOAR) initiative」の3件を調査対象としました。これらのサイトには、計3255件の臨床試験データが、さまざまな製薬企業や医療機器会社から提供されていました。医療分野関連の企業では、データ・シェアリングについて何らかの方針を設けているのが一般的です。

臨床試験には、医薬品や医療機器の安全性を少人数の健康な人で調べる「第Ⅰ相試験」、少人数の患者で実際の有効性や安全性を調べる「第Ⅱ相試験」、大人数の患者で有効性や安全性を調べる「第Ⅲ相試験」があります。さらに市販された後に安全性や有効性を調べる「第Ⅳ相試験」というものもあります。ネイヴァーらが調べた3255件の臨床試験データのうち、最も多かったのは第Ⅲ相試験でした(44%)。次いで第Ⅰ相試験(24%)、第Ⅱ相試験(18%)、第Ⅳ相試験(13%)でした。

こうしたプラットフォームに登録されている臨床試験のデータを研究者が利用する際には、当然ながら申請書を提出することになっています。グループは、2013年から2015年にかけての申請書とデータ利用同意書のすべてを分析しましたが、2年間で提出されていた申請書は234件でした。調査の時点ではそのうちの12件が却下され、4件が撤回され、10件が審査中、154件が承認されていました。しかし実際のデータ・シェアリングの同意手続きを終えていたのは、わずか113件だったのです。申請書は17カ国から寄せられていましたが、半分以上(54%)はアメリカからの申請でした。同意手続きを終えていた申請のうち50件は「治療効果の二次的な分析」を、31件は「病態の二次的な分析」を目的として挙げていました。申請して得たデータを分析して、その結果が発表されたものはわずか1件でした。また、計3255件の臨床試験のうち、データへのアクセスを申請されたことがあるものは、わずか505件、つまり15.5%にとどまっているということが判明しました。

研究者たちは、臨床試験データがあまり活用されていない理由として、こういったプラットフォームについて知られていないこと、申請によって得たデータを分析した結果があまり発表されていないこと、そうした分析をサポートするための予算提供が足りないこと、を挙げています。ネイヴァーらのグループは、データ・シェアリングを熱心に支持しており、「シェアされた臨床試験データの利用しやすさを促進すべきである」と主張しています。研究者や製薬企業がデータをプラットフォームに預けていても、そのことが知られていなかったり、使いにくかったりするのであれば、活用されることはないでしょう。データ・シェアリングをめぐる試行錯誤はまだまだ続きそうです。

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