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【東京医療保健大学】金子 眞理子 教授インタビュー(前編)

各大学の研究室に訪問し、研究者たちにおける英語力向上の可能性を探るインタビューシリーズ。七回目は、東京医療保健大学の金子眞理子教授にお話を伺いました。前編では、「英語ネイティブに伝わるかどうか」という不安に負けず、投稿にチャレンジし続けることの大切さについてお話くださいます。

■研究室で扱っている専門分野、研究テーマを教えてください。
「サイコオンコロジー」というがん患者へのメンタルヘルスやメンタルヘルス全般を研究テーマにしています。解決困難な問題を抱えた患者さんやご家族にケアを提供し、患者さんやご家族の生活の質を高めることが目的ですね。
もともとは聖路加病院に勤めていました。そこで終末期の患者さんと触れ合う内に、看護師は「身体のケア」には特化しているけれど、「精神面に関するケア」が不十分だと感じるようになったのです。そこで、身体・メンタルの両面を連携させたケアができる看護師を目指すべく心理学の修士号や精神看護学の博士号を取得し、東京女子医科大学のがん看護学の分野で講師として教育に携わりました。この頃、専門看護師の制度ができ、さらに精神看護の専門知識を積むために看護の修士号を取得しました。その後、「リエゾンナース」、つまり身体疾患を持つ患者さんやご家族およびスタッフの心のケアを行う精神看護専門看護師として日本医科大附属病院に勤務し、リエゾンナースの知識や実践を活かしながら、東京女子医科大学の准教授を経て、昨年より精神看護学の領域で東京医療保健大学の教授に着任しました。
そういった経歴を背景として、がん患者さんのメンタルケアに関する研究や、看護師の メンタルヘルス に関する研究、最近では、うつ病や双極性障害といった気分障害を抱え、休職している方々の復職支援(リワーク)に関しても、ストレスマネジメントや認知行動療法を用いた実践を行っています。

■英語論文の執筆や学会発表、共同研究などの場で、英語で苦戦した経験はありますか?
そのほうが多いですね(笑)。大学院に入って初めて学術英語に触れましたが、心理学などは特に学術英語が非常に難解なので、トラウマになるくらい苦労させられました。院生たちが分担して分厚い英語の原著を日本語に訳して発表をする授業がありまして、休日はほぼその訳に費やし真剣に取り組んでいたのですが、毎回「訳がなってない」と怒られました。
准教授になってから、海外ジャーナルへの投稿にチャレンジするべく、辞書を使って自分で書いてみたり、学術英語の講習会に通ったり、英語論文がアクセプトされるコツが書かれた専門書を読んだりしましたが、やはりネイティブに伝わるのかどうかという不安が払拭できなくて。餅は餅屋に任せようと思い、自分の日本語論文を翻訳会社に訳していただき投稿しました。投稿後は時間内に査読を返さなくてはならなかったりと煩雑なやりとりが発生しますが、今は翻訳会社がサポートしてくれるので、もっと投稿にチャレンジし、研究成果を海外に発信していこうという前向きな気持ちになっています。

■学生や若手研究者は、どのようにして英語での論文執筆力を鍛えるべきだと思いますか?
やはり自分で執筆してみないと感覚が掴めないですし、力が身につかないと思います。私も英語はとても苦手で、ジャーナル査読者とのやり取りもおぼつかないレベルでしたが、チャレンジしているうちに言い回しや慣用句などを少しずつ覚えていきました。時には翻訳会社の力も借りながら、まずはどんどん投稿に向けてチャレンジするのが一番だと思います。
投稿の回数を重ねることによって執筆のコツが掴めていきますし、研究成果を発表していくことは研究者の使命でもありますね。結果的に投稿実績も増え、複数のジャーナルから声がかかったりすることもあるので、研究者としてのモチベーションにもつながります。積極的にチャレンジしていってほしいですね。


後編では、学術英語を執筆する基礎知識を学ぶ場としての大学の役割に言及されます。

【プロフィール】

金子 眞理子(かねこ まりこ)
東京医療保健大学 東が丘・立川看護学部看護学科 精神看護学 教授
精神看護専門看護師 CBTストレスカウンセラー

1988年 国立福岡中央病院附属看護学校卒業
1988年 聖路加国際病院 入職(1993年3月まで)
1993年 青山学院大学文学部第2文学部教育学科心理学専攻 卒業
1995年 青山学院大学大学院文学部心理学専攻博士前期課程修了(修士・心理学)
1999年 聖路加看護大学大学院看護学研究科博士後期課程 修了(博士・看護学)
1999年 東京女子医科大学看護学部 講師(2005年3月迄)
2007年 慶応義塾大学大学院健康マネジメント研究科看護学専修博士前期課程 修了(修
2007年 士・看護学)
2007年 日本医科大学付属病院 リエゾン精神看護師(2009年3月まで)
2009年 東京女子医科大学看護学部・大学院看護学研究科 准教授(2015年3月まで)
2015年 東京医療保健大学東が丘・立川看護学部 看護学科 精神看護学 教授(~現在)

 

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