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【東京工業大学】初澤 毅教授インタビュー (前編)

各大学の研究室に訪問し、研究者たちにおける英語力向上の可能性を探るインタビューシリーズ。二回目は、東京工業大学の初澤毅教授にお話を伺いました。インタビュー前編では、「まずは自分で」英語論文を執筆する重要性をお話しくださいました。

■こちらの研究室で扱っている専門分野、研究テーマを簡単に教えていただけますか。
大きな枠組みで言いますと機械工学系になります。その中でも特に精密工学という分野の、マイクロマシンやナノメカニズムといった非常に細かい世界を相手にしているところです。分野としてはバイオ・医療系になり、うちの准教授はバイオ系が専門です。要は、機械とバイオの研究者がお互いの境界をクロスさせて、新しいことにチャレンジしようというところです。

■私たちの身近な製品につながることもありますか。
例えば、非常に小さな粒子を作る技術があり、その粒子の表が白、裏が黒というような色分けをしたものを作ることができます。それを大量に並べて電気をかけると、その球(粒子)が白黒とひっくり返って表示されて、時計などの、大きな表示板として使うことができます。

■先生ご自身が、英語論文の執筆、学会の発表、共同研究などの場で、英語で苦戦した経験はありますか。
今はもう論文は英語で書くのが当たり前で、日本語で書くことはまずありません。駆け出しの頃は一般教養としての英語しか習っていませんでしたから、自分勝手な英語しか知りませんでした。テクニカルライティングの専門教育や専門用語などにも慣れていませんでした。
論文英語は初めはハードルが高く、数をこなして経験を重ねるしかありません。昔は、英文校正サービスなんてありませんでしたから、来日している外国人を捕まえて、5000円とか1万円とか払って、あるいはご飯を食べさせてあげて、ちょっと 英語 を見てくれないかと頼んでいました。英文校正サービスができてから、本当に楽になりました。ありがたいです。

■学生や若手の研究者の皆さんは、どのようにして英語で論文を執筆する力を鍛えていくのでしょうか。
学生が専門教育で英語に接する最初の機会は、恐らく学部4年生のゼミで、自分に関係するテーマの論文を読んでみんなに紹介するときだと思います。その後、我々の専攻である機械系・電気系の5教科ほどでは、大学院の授業は英語と日本語で書かれた教科書を使います。
さらに課程が進めば論文を英語で書く段階になりますが、修士だけで卒業してしまう学生は、恐らくあまり英語で論文を書く機会がありません。でも人によっては、国際会議で発表する場合もありますので、そのプロシーディングを書くことはありますね。その場合は、とにかく、まず自分で書きなさいと言っています。まず学生が自分で書いてみる。それを我々がチェックする。我々でもどうしようもないということになったら、エナゴにお願いする。そんな三段論法みたいな方法を取っています。
最近、日本語で書いたものを直ぐに翻訳してくれるサービスもありますが、基本的にあれは、社会人の時間がない方々のためのサービスだと思っています。大学としてそれをやると、学生の教育にならない。やはり、一回は学生に自分で書かせる、その後で直していただくというのが、我々にとっては一番ありがたいです。

■博士論文の提出やジャーナル投稿前は、英文校正の会社を利用しますか。
そうしないと、英語を直してもらいなさいという判断が査読後に返ってきてしまいます。あらかじめ投稿する前に英文校正の会社に見ていただいて、それから学会誌に投稿するというプロセスが一般的だと思います。


後編では、英語でのプレゼンテーションスキルの上達方法について、詳しくお話を伺っていきます。

【プロフィール】

初澤 毅(はつざわ たけし)
東京工業大学 未来産業技術研究所 融合メカノシステム 教授

1958年4月 横浜生まれ
1981年3月 東京工業大学 工学部 制御工学科卒
1983年3月 東京工業大学大学院 総合理工学研究科
1983年3月 精密機械システム専攻修士課程修了
1983年4月 通商産業省 工業技術院 計量研究所(現 産業技術総合研究所)入所
1983年3月 サブnm領域の測長技術・国家標準関連研究に従事
1983年3月 研究員,主任研究官を経て,博士(工学)取得
1995年4月 東京工業大学 精密工学研究所 助教授
2000年4月 東京工業大学大学院 理工学研究科 助教授
2002年4月 東京工業大学 精密工学研究所 教授
2016年4月 未来産業技術研究所に改称
1983年3月 現在に至る

 

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