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【芝浦工業大学】松日楽 信人 教授インタビュー(前編)

各大学の研究室に訪問し、研究者たちにおける英語力向上の可能性を探るインタビューシリーズ。十一回目は、芝浦工業大学の松日楽信人教授にお話を伺いました。前編では、ご自身の研究と、英語で苦労された経験や勉強法についてお話くださいます。


■先生の研究室で扱っている専門分野や研究テーマを教えていただけますか。
ロボティクス、つまりロボット工学です。人と共存するロボット技術の研究をしています。その1つがRTミドルウェアで、共通の標準化されたソフトウェアを使っていろいろな応用研究をしています。
カメラマンロボットという、写真を自動で撮ってくれるロボットがあります。そういうロボットの製作にRTミドルウェアを使いますが、要するにこれはロボットにおける要素です。要素としてソフトウェアのモジュールを組み合わせ、目的とするロボットを作っています。
目的としては工業や産業というより、ロボットと人が共存する社会や生活を目指してロボット作りに取り組んでいます。
具体的手順としては、まず最初に自動的に写真撮影をするロボットを作ろうと決めるわけです。それの目的を分解していき、移動を制御するモジュールや、音声を聞き分けるモジュール、そして画像処理で人を見つけるモジュール、もちろん写真を撮るモジュールを組み入れていき、印刷するモジュールまで全部組み合わせるわけです。でもただ組み合わせるだけだとうまくいかないので、そこに我々の研究の要素を加えていくのです。
こうしてできたロボットをいろいろなところでデモンストレーションしています。こういうロボットは役に立ちますかとか、こんなロボットがあるとお店にお客様がたくさん来ます、と。
2つ目のテーマとして遠隔操作ロボット研究をしています。こちらはインターネットで遠隔操作をするロボットです。もし災害の現場など通信のインフラがない場合でも、そこでスマホが使えるなら、この研究を使ってロボットのコントロールができます。つまりインターネットが使えるとどこからでもアクセスでき観察もできるわけです。この研究成果でロボットでどのようなことができるかを検証実験しようとしています。
インターネットの通信プロトコルも共通化が進んでいるところなのでそちらも少し使っていますね。
■確か東南アジアの国から遠隔操作で日本のロボットを動かしたということも聞きました。
特別な準備も要らないんです。福島などの災害現場にRSNPというプロトコルが乗ったロボットを用意しておくと、あとはインターネット経由でいろいろなところからそれぞれの専門家がアクセスして作業することができると思います。国内だけでなく国外からも可能で、そのような臨機応変な遠隔操作のシステムを研究しています。
今、テレプレゼンスという言葉が出てきて、スマホで運用された倒立型のロボットも会議に出席したりしますが、それをもう少し広げてみたいと思っています。
最後の3つ目としては福祉系のテーマです。人間の立ち上がり動作や、高齢者の生活を支援するようなロボット技術を研究開発したいと思っています。
遠隔操作と、応用研究、それに福祉用の機器としての研究という3本柱です。
■わかりました。先生ご自身、英語論文の執筆や学会の発表、または共同研究などの場において英語で苦労したご経験はありますか。
苦労はたくさんしています。英語で発表する機会は多いですが、まだ自分も 英語力 は不足していますので、ディベートや、ディスカッションになると少し苦しいです。学会発表では発言内容は決まっていますから、それなりに対応はできますが、議論や討論のようになってくるとさっと自由に言葉が出ませんから今でも苦労していますね。
■ディベートの場は日常的によくありますか。
学生や留学生がいるので、特に留学生の指導では英語は使わないといけませんが、上下関係がありますから、相手が一生懸命聞いてくれることになってしまう。それが対等の立場で議論しなければいけないとなると、苦しいです。学会発表だけでなく、ワーキングや、国際ワーキングなどが時々ありますが、そのような場面ではまだまだ力不足なところがあります。
■論文等、書くことはいかがですか。
書くことは書きます。英語そのものはそんなに苦手でもなく、好きなので自分で書きますが、やはり基本的な文法などはよく間違えるので、英文校正に出しています。
■先生ご自身が英語論文を書き始めた頃は、書くことに対してどのように慣れていきましたか。
自分で勉強するしかないですよね。英語の論文を読んで、書き方や、分野が同じだったらそのキーワードを使って書き続けました。
同じ分野ならではの表現方法がありますから、それを参考にしながら、自分流ながらも書いていました。
■自分自身で多くの論文を読み、まず書くことがあるのですね。恩師からご指導を受けたりしましたか。
僕自身は長く会社に勤務していました。大学に来て6年目ですが、会社では自分でちゃんと書いたものを英文校正に出して、外部に出します。だから文章はしっかり見てもらうのは自分にとって前提になっています。


後編では、学生や若い研究者の英語力向上方法と、それをサポートする大学の役割について言及されます。

【プロフィール】

松日楽 信人(まつひら のぶと)
芝浦工業大学 工学部 機械機能工学科 教授

1982年-2007年東京工業大学理工学研究科大学院修士課程修了
1982年-2007年東京芝浦電気株式会社(現 株式会社東芝)入社
2004-2007年 東京工業大学21世紀COE特任教授
2005‐2008年 総合科学技術会議科学技術連携施策群次世代ロボット連携群
2011年-2007年芝浦工業大学工学部機械機能工学科教授(~現在)

 

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