14

要注意!一次情報と二次情報の取り扱い

文章を書く時、他の文章や情報を参考にすることはよくありますが、情報源を正しく認識しておかないと、思わぬ落とし穴に落ちかねません。情報の出所を明記すること、他者から得た情報ならそれが信頼できるものかを確認し、記載しておくことは、情報を発信する者の責務です。今回は、論文を書く際の情報の扱いで注意すべきことを見てみます。

■ 情報には2種類ある

論文に記載する内容が、どこから得た情報なのか。これを明確にすることで、読み手は、その内容が著者自身の考えや実験によって得られた結果に基づくものか、あるいは他者の考察や研究から得られたものかを知ることができます。引用しておきながら情報源を示さないと、盗用・剽窃となってしまう可能性もあります。内容が何であれ、多くの研究機関や大学は、情報源を明確に示すことを義務付けています。


情報はその情報源によって、一次情報と二次情報に分けられます。
一次情報とは、オリジナルな情報、つまり著者本人が直接的に体験から得た情報、考察、本人が行った調査や実験の結果などです。一次情報の作成・収集には手間(+資金)と時間を要することから、情報としての価値は高くなります。
対する二次情報とは、他者を通して得られた情報、一次情報を解釈した上で記されたもの、あるいはどこかに掲載・保管されていた情報などです。第三者を介して得られた情報や、書籍や新聞、TVなどの報道から得られる情報が該当します。インターネットの普及により、二次情報は格段に入手しやすいものとなりました。しかし、簡単に得られるようになったがために、情報が過剰供給され、信頼できる情報の選別が難しくなってきているのも事実です。

■ 論文における一次情報と二次情報

論文における一次情報とは、特定の理論や事象、研究を経て得られた結果についての研究者本人の考えや新事実などです。実験データ、調査結果、アンケート集計結果、統計など、研究によって新たに判明したものです。

二次情報は、研究の背景や過去に試された手法など、一般的には一次情報を詳しく解説あるいは補足する情報です。二次情報(他者の論文や文献)を論文中に引用する場合には、自分の研究の内容に適合した情報を選択すること、その情報の信用性を確認すること、その情報の出所を正確に記載すること、に気をつけなければなりません。

特に、情報源を的確に示さないと盗用・剽窃の疑いをかけられることもあり得るので、注意が必要です。情報源の示し方(引用方法)については、さまざまなスタイルガイドやガイドラインが出ているので、参考にしてみてください。

■ 二次情報を引用するときの記載方法―スタイルガイド

論文中に二次情報を引用した時は、それが引用であることを所定のスタイルに準じて記載しますが、英語論文の作成では、MLA、APA、シカゴマニュアル(CMOS)系のスタイルのいずれかを用いるのが一般的です。MLAスタイルは、MLA(Modern Language Association、米国現代語学文学教会)が編纂しているガイドラインで、人文系で多く利用されています。APAスタイルは、APA(The American Psychological Association、米国心理学会)が編纂しているもので、心理学、社会科学の分野をはじめ幅広い分野で利用されています。CMOS(Chicago Manual of Style)は、シカゴ大学出版局から刊行されているスタイルガイドで、CMOSの執筆・出版ガイドラインがシカゴスタイルと呼ばれており、執筆者だけでなく学術雑誌(ジャーナル)や専門書の編集者や出版関係者にも広く利用されています。

それぞれのスタイルガイドは、近年のIT技術の進歩で変化する論文作成・発表方法に応じて、随時改訂を重ねています。APAスタイルのように年々更新されている(現時点では第6版)ものもあるので、論文を執筆する際には最新版を参照するようにしましょう。また、論文を投稿する場合には、投稿先の学術雑誌や学会によってスタイルを指定していることが多いので、確認するようにしてください。

世の中に流通している情報量(流通情報量)は年々増加しており、世の中の人が得ている情報量(消費情報量)をはるかに凌駕します。その差は今後、ますます広がることが予測されます。
このような状況の中、一人でも多くの人に自分の論文を読んでもらい、かつ正しく理解してもらうためには、簡潔で明瞭な文章が必要です。一次情報と共に二次情報をうまく取り込みつつ、二次情報であることを明確に示すことで、よりよい論文を作成されてみてはいかがでしょうか。

 

参考記事
University of Manitoba Academic Learning Centre: Citing Secondary or Indirect Sources: APA, MLA & Chicago Styles

 

 

X

今すぐメールニュースに登録して無制限のアクセスを

エナゴ学術英語アカデミーのコンテンツに無制限でアクセスできます。

  • ブログ 560記事以上
  • オンラインセミナー 50講座以上
  • インフォグラフィック 50以上
  • Q&Aフォーラム
  • eBook 10タイトル以上
  • 使えて便利なチェックリスト 10以上

* ご入力いただくメールアドレスは個人情報保護方針に則り厳重に取り扱い、お客様の同意がない限り第三者に開示いたしません。

研究者の投票に参加する

研究・論文執筆におけるAIツールの使用について、大学はどのようなスタンスをとるべきだと考えますか?