「医療新時代」がやって来る?
7グローバル化が叫ばれて久しい今日、医療の現場でもそれは進んでいます。医療先進国への医師の派遣や複数の国での合同臨床、遠隔治療……。医療も国境を越える時代にあって、医師同士の情報交換・情報共有の重要性が増しています。高品質の医療をどの国でも提供できる優秀な「医師ネットワーク」の形成が急激に進み、「医療新時代」に突入しているのです。
■ 医師ネットワークがもたらす革新
従来、医療関係者は学術論文を読んだり学会に出席したりすることで、最新の情報を入手していました。それがインターネット全盛の時代になり、医療関係者は他の医師や医療機関とオンラインで関係を構築し、知見を共有するようになりました。症例研究や術式、技術などを開示し、他者にも役立ててもらうことで、これまで医療が行き届かなかった国・地域でも、医療先進国同様の治療を提供することができるようになりつつあります。
医師ネットワークの主な利点
• 登録している医師・医療関係者が、最新情報から自らの分野に関連する情報を選択して取得するのを容易にする。
• オンラインを活用することで、より多くの後進または若手医師などが、エキスパートあるいは識者による指導を受けることができる。
• 医療関係者が専門分野を超えて交流することで、症例に対する思わぬ治療法を見出せる可能性がある。
• ネットワーク内でデータを含めた各種情報にいつでもアクセスできることが、知識の幅広い共有を促進する。
• 新しい研究を含む最新かつ信頼できる情報が入手可能になる。
こうしたネットワークが医療従事者にもたらすのは、情報へのアクセスだけではありません。最新の知見に触れることで、患者に最善の医療を提供できるようにしようという、医療関係者へのさらなるモチベーションの想起も期待できるでしょう。
■ 画期的な医師ネットワークはもう既に
既に、医療関係者を対象にした学術ネットワークは多数存在しています。それらはネットワークの構築や症例・治験実施計画書などの共有と意見募集、クラウドファンディングなどに活用されています。代表的なネットワークとしてG-Med、Sermo、Doximity、DailyRounds、Among Doctors などが挙げられます。
G-Med について見ていきましょう。G-Medは、医療関係者のみを対象とする世界最大のグローバルオンラインコミュニティで、12万人を超える医師が登録している、世界各国における研究や臨床試験のデータが共有できるプラットフォームです。医療関係者はEメールアドレスとライセンスの詳細を登録することで、手軽にプロフィールの作成を行い、無料でG-Medの情報にアクセスすることができます。
G-Med の登録者は、共通の関心事、アイデア、自身の活動内容や参加イベントなどを切り口に、グループを作ったりパネルディスカッションに参加したりすることができます。他の会員の投稿記事や論文を読んだりコメントしたり、さらにはライブ映像配信システム(ソフトウェアのダウンロードは不要)を使って、医師同士で議論を行うことも可能です。ここでの出会いをきっかけに、同分野のみならず他の専門分野の医師とのディスカッションや共同研究も生まれています。さらには被験者の募集もできるというのですから驚きです。
■ 医療の未来-医師ネットワークの可能性
「医師ネットワーク」には多くの可能性があります。世界中の医師がつながることで、これまで考え付かなかったアイデアが生まれ、形になりつつあります。例えばG-Med は、オンライン診療所「Tel Aviv-based G-Med」の計画を発表しました。これは、患者が自宅にいながらにして医師と会話ができるようにするものです。無医村や過疎地域に住む人々や、高度医療サービスを受けることが困難な人々にとって、非常に大きな意味を持つ試みです。
さらにG-Medは2018年の秋、病院や診療所向けの新たなサービスを、無料で提供し始めることも計画しています。病院に勤務する医療スタッフを対象にした、臨床に関する相談や他の病院スタッフとのコミュニケーションを可能にするグローバル・プラットフォームのほか、病院ごとのイントラネットも整備される予定です。
IT技術(インターネット)が可能にした、医師ネットワーク。専門家が協業することで、無限の可能性が広がっており、今後さらなる画期的なサービスが生まれるのも夢ではありません。あなたが思い描く夢のような医療の形は、すぐ目前にまで迫っているのかもしれません。
こんな記事もどうぞ
Understanding Physician Networks: An Interview with G-Med