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より効果的な共同研究で気候危機に立ち向かおう

環境と日々の生活を脅かす気候危機は、現在、最も差し迫った問題のひとつです。対策を講じるためには、研究者が集まり、オープンかつアクセスしやすい方法で研究・調査結果を共有することが非常に重要となっています。共同で研究を行い、成果をオープンアクセス(OA)ジャーナルに公開することによって、研究者は自分たちの研究をできるだけ広範に届け、影響力を高めることができるようになります。

気候変動の複雑さと喫緊の行動の必要性を踏まえると、関連する研究においては、革新的かつ効果的、さらに分野横断的なアプローチの開発が欠かせません。しかし、従来型の気候研究コミュニティは、共同研究を進めることや影響力を高めることに対して効果的には動けておらず、研究資金の調達や共同研究の構築に奮闘しているのが現状です。

気候危機:今、世界は何を必要としているのか

気候危機が、現在、最も差し迫った問題のひとつであることに疑いの余地はありません。すでに世界中で気候変動の影響が出ており、状況は悪化の一途をたどっています。早急に気候変動の影響を緩和させ、さらなる被害を防ぐために行動を起こす必要があります。

世界が気候危機に対してできることの最も重要なことは、再生可能エネルギーに移行することです。化石燃料(石油・石炭・ガス)は、温室効果ガス(GHG)の主要な排出源なので、再生可能エネルギーに転換することが化石燃料からのGHG排出量の削減につながります。再生可能エネルギーは化石燃料よりも持続可能で環境にやさしいエネルギー源なので、世界は一刻も早く、再生可能エネルギーへの移行を進める必要があります。

また、サステナブル・プラクティス(持続可能な慣行)を促進することによって、気候変動に対する取り組みを進めることも重要です。それには、共同研究を行うことにより科学の発展を促進し、研究コミュニティ内で研究成果が簡単にアクセスできるようにすることなどを含みます。持続可能性には、廃棄物の削減や、資源の保全、自然生息域の保護といったことだけではなく、グローバルなアクセシビリティ(世界のどこからでもアクセスが可能になること)を備えた研究を徹底的かつ継続的に発展させることも意図されています。持続可能性とは、将来世代に地球環境を残すための鍵なのです。

OA出版の必要性

科学研究は、時間のかかる複雑なものです。気候危機への取り組みを大きく進めるためには、それぞれの研究が相互協力するための効果的な方法が必要です。研究成果をオープンアクセス(OA)で出版することで、誰もが最新の研究成果にアクセスできるようになり、研究者同士が協力することも可能になります。こうして、研究を積み重ね、さらに発展させることができるようになるのです。

OA出版には、研究成果をより広範囲で利用できるようにするというメリットもあります。この点は特に、従来の学術雑誌(ジャーナル)へのアクセスが限られる開発途上国の若手研究者や科学者には大切なことです。物理的なアクセシビリティの改善だけでなく、OAジャーナルは、有料で購読するジャーナルよりも安いのが一般的なため、予算の有無や大きさに関わらず、誰もが手ごろな価格で研究成果にアクセスできるというメリットも存在するのです。

気候危機に立ち向かう共同研究

気候変動に立ち向かうためには、共同研究が不可欠です。データや調査結果を共有することにより、研究者は協力して気候変動のパターンや傾向を特定し、直面する課題に対する解決策を見出すことができるようになります。

共同研究を通して、異なる分野の研究者が専門知識や見解を共有し、知識(リソース)を蓄積することによって重要な気候変動問題に関する研究を発展させることができるのです。研究コミュニティが協力することで、気候変動への緩和・適応策を模索し、将来世代のために地球環境を守る方法を見出すことができるでしょう。

一例としては、イギリスのエクセター大学(University of Exeter)はオックスフォード大学(University of Oxford)などとパートナーシップを結び、気候危機の問題に取り組んでいます。こうした複数の大学による共同研究が、気候危機の問題への理解を深め、対処する新たなアプローチを見出すことにつながることが期待されます。

以下のような点に重点を置いて研究が進められています。

  • 気候変動における海洋の役割
  • 自然環境への気候変動の影響
  • 気候変動による社会的、経済的な影響
  • 気候変動に対する政策対応

エクセター大学のTim Lenton教授とオックスフォード大学のMyles Allen教授がこの共同研究を主導しています。両教授とも、それぞれの分野では世界的に有名な研究者であり、両大学の強みを生かして、世界を牽引する研究チームを作ることを目指しています。

共同研究における課題

過去10年ほど、研究者が情報(リソース)と専門知識をお互いに共有しようと努めるにつれ、共同研究は一般的になってきましたが、一方で多くの課題も生まれています。共同研究を継続し、効果的に進めるためにはこうした課題に対処しなければなりません。

出版費用の増加

課題のひとつは、学術ジャーナルの出版費用の高騰です。多くの研究者が共同研究を行うようになるにつれ、オープンアクセスの需要がかつてないほどに高まってきました。しかし、多くの出版社は、収益が減ることを懸念し、自社のジャーナルをOA化することに積極的ではありません。共同研究を長期的に続けられるようにするには、この問題を解決する必要があります。

時代遅れの技術(テクノロジー)の利用

もうひとつの課題は、共同研究を行う際、時代遅れの技術を使っていることが多々あるということです。電子メールや電話会議などの通信手段は、即時的なコミュニケーションやリアルタイムのフィードバックを必要とする最近のニーズには適応しきれていません。共同研究の効果を保ちたい場合には、新しいテクノロジーを採用する必要があるのです。

オープンアクセスは諸刃の剣

オープンアクセス(OA)は有用ですが、諸刃の剣でもあります。研究者が所有する情報量に差(情報の非対称性)が生じる可能性があり、そうなると共同研究にも支障をきたしてしまうのです。例えば、特定の研究成果にアクセスできない研究者と、アクセスできる研究者が協力しようとした場合、アクセスできない研究者が不利になる可能性があります。

近年は、研究成果をより広く共有することのできるOA出版の人気が高まっていますが、OA出版は共同研究の助けとなることも、反対に妨げとなることもあり得ると頭に入れておいてください。気候危機と戦うための研究を進めるには、こうした課題に対処していく必要があります。

共同研究を進めるために

個人で研究を行う場合、研究者は隔離された環境で、重要な作業の多くを単独で進めていきます。しかし、気候変動という地球規模の問題へ取り組みには迅速な行動が求められており、そのための最善の策としては、気候変動に関する問題意識を広め、研究者の国際的な共同研究への参加を促進することです。

OA出版が普及するにつれ、図書館、資金提供者、大学や研究機関に至る研究コミュニティは、さまざまなメリットを享受してきました。重要な研究資料にアクセスし、それらを読むことができるのは、研究者や学生、さらに一般の人々にとっても非常に重要であることは明らかです。喫緊の対応が求められる気候変動対策に関する研究を進める上でも、最新の研究成果にいち早く、低コストでアクセスできることは大きなメリットとなっているのです。

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