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研究者の結婚、育児

女性研究者仲間が集まるとよく話題になるのが、「いま結婚するのは得策か?」「妊娠するのは少し待ったほうがいいか?」などという、研究者としての自分と女性としての自分の人生とを、どうやってバランスよく保つかという問題です。教授職を獲得するまで待って高齢のため妊娠に苦労している人。博士論文を書いている途中で妊娠し、その後出産と育児に追われ卒業できずにいる人。いま付き合っている男性が転勤の多い職業であるため、結婚したらどちらのキャリアが犠牲になるのか悩んでいる人。それぞれ立場や問題は違いますし、「正しい選択」もまちまちです。
女性研究者が上記のような問題に直面したときに、どのような対策を取るべきか?
まずいえることは、いろいろな人と話をすることの大切さです。とくに、しかるべき人に相談することです。
研究者どうしで経験を分かち合うのはもちろんですが、大学や企業の同僚とばかり話をしていると、お互いに慰めあうことばかりになりがちです。もっと現実的な情報を集めるた めには、福利厚生を担当している部署の人に相談するのがよいでしょう。私生活に口出しされるのが嫌であれば、「別に今すぐ結婚を考えているわけではないけれど、他の人の話を聞いていて不安になったので、この会社(大学、研究所etc.)の結婚・妊娠・出産などに関する支援制度がどうなっているか聞いておきたい」といえば、福利厚生担当者もあれこれ質問しないのではないでしょうか?
話を聞くさいには、育児休暇や育児のための部分休業、育児休業代替者制度など、どのような支援制度が確立されているかということとともに、そのような制度をどのようなタイミングで利用できるのか、また今まで利用した人が何人ぐらいいるのかを確認しましょう。育児休暇があっても、決まった期間内で取得しなければならないため、出産前に体調を崩して緊急入院することになっても、休暇を利用できない場合があります。また、条件がどんなによくても、今まで誰も利用したことがなければ、実際に支援制度を利用しようとする段になって、周りからのプレッシャーで退職を余儀なくされることもありえます。
また情報収集は、できるだけ広い範囲で行うのが得策です。企業や政府、大学が設けている助成制度やプロジェクトは日頃からチェックしておくとよいでしょう。また、厚生労働省の「特別保育事業の実施について」という通達にもとづいてつくられている「子育て支援センター」の位置や利用条件など、地域の支援体制や育児支援制度もおさえておきましょう。託児所や緊急病院など、いざというときのために必要な施設のリストを作っておくこともおすすめします。
次に大切なことは、得られる援助はありがたく最大限に利用するということです。
自分1人で悩んだり解決しようとしたりする必要はありません。最終的に感謝の気持ちさえ忘れず、自分のできる範囲で他の人への手助けを惜しみさえしなければ、「あの人は、いつも……」と陰口を叩かれることもないはずです。
もしあなたにすでにパートナーがいるのであれば、同様のことがカップル内でもいえます。「女だから」、「男だから」、「お給料のいいのは私だから」、「規律の厳しい職場に勤めているのは私だから」など、さまざまなプレッシャーがあるかと思いますが、社会のステレオタイプに押しつぶされることなく、人生のパートナーとして、ともにがんばることのできるゴールを定め、そこへたどり着くための情報収集を一緒にしてこそ、後悔しない人生の選択ができるのではないでしょうか?

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