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研究論文での盗用を未然に防ぐには?

現在、学術出版界における重大な問題となっており、研究論文撤回の大きな理由の1つとなっている“盗用”。2014年に日本で大きな騒動となった「STAP細胞事件」においても、問題となった論文の一部に別の論文からのコピー&ペーストが疑われたほか、当該の研究者が大学院生時代に書いた博士号でも大量の盗用が見つかったことが大問題になりました。すでに確立されているアイデアや数値に基づいて論文を書くことは大事なステップですが、盗用に陥らないように慎重に作業をしなければなりません。
世界では、論文の正当性を証明するさい、ある語句やアイデアの引用元を示すことが必要とされないケースが存在します。しかし、「引用」という形で論文の正しさを実証するやり方は、国際的な学術界の中ではいまや必要条件です。非ネイティブの研究者たちはそうした倫理的なルールの遵守に加え、英語による専門的な内容の説明が要求され、敷居はより高くなっています。論文の作成や投稿にデジタル技術が深くかかわる時代になったことも、盗用の問題に影響を及ぼしています。いまや研究者はインターネット上で容易に資料やデータにアクセスでき、それらの情報を簡単にコピー&ペーストできてしまう時代になっているのです。
研究者は盗用を他人事として捉えることなく、自分自身で大切な情報を守らなければなりません。ここでは盗用を避けるために効果的なヒントをいくつかご紹介します。
1. 言い換え
参照資料から文章などをそのままコピー&ペーストしてはいけません。その代わり、著者自身の言葉で考えを言い換えるのです。正しく言い換えるためには参照資料の内容をあらかじめよく理解しておくことが大切です。
たとえば以下のサイトで、よい言い換えの例を参照することができますので、参考にしてください。


Successful vs. unsuccessful paraphrases
2. 引用符
別の論文から文章をそのまま引用していることを示すためには、引用符を使用します。引用箇所は、引用元の文章中で表記されていた形とまったく同じ形で表記されなければなりません。
3. 引用する対象の取捨選択
著者自身が考え出したものではなく、他の論文から拝借したアイデアはすべて引用文として扱わなければなりません。
自分自身の資料からの引用、つまり他人の論文からの引用ではなく、著者自身の過去の資料などから文章を引用する場合も、それが引用であることを明示しなければなりません。著者自身が過去に発表した論文などからであっても、それが引用であるという明示なしに文章を再使用する行為は「自己盗用」と呼ばれます。
もちろん自分自身で行った実験・検査・調査などによって収集した科学的な証拠は、引用の対象として扱う必要はありません。同様に、既定の事実や一般的な常識も引用対象として扱う必要はありません。引用対象とするかどうか判断に迷う場合は、やはり引用対象として扱い、参考文献を追加しましょう。
4. 引用元情報の記述
引用元情報を適切に記述しましょう。EndNoteReference Managerのような引用ソフトウェアを使用して、論文に使用した引用箇所を管理しましょう。
背景情報や文献の検索においては、できる限り複数の参考文献を提示しましょう。論文を書くうえで参考になるもののなかには、研究の現状を包括的にまとめた「レビュー論文」という形式の論文もあるのですが、論文で引用するさいには、レビュー論文のみを参照するのではなく、そのレビュー論文が引用している個々のオリジナル論文を参照して引用を行うべきです。

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