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日本の研究者は再び世界と肩を並べることが出来るか?

「日本の研究は世界トップレベル」「アメリカに次ぐ世界第2位」だと思っていませんか? 確かにかつては「トップレベル」と評されたこともありました。しかし今、学術研究における日本の地位は急激に下降しています。そう聞くと博士課程に進学することを躊躇したり、研究者になるのを諦めたりしたくなるかもしれませんが、明るい話題もあるので悲観する必要はありません。

世界における日本の研究レベル

まず日本の国際的研究レベルは現在どのくらいなのでしょうか。引用数の高い論文の発表数、特にトップ10%補正論文数(論文の被引用数が上位10%に入る論文の抽出後、実数で論文数の10分の1となるように補正を加えた論文の数)がどのくらいかがひとつの指標になります。「科学技術指標2020」(科学技術・学術政策研究所)によると、2016-2018年の年平均で日本の世界ランクはなんと11位でした。アメリカに次ぐ2位どころではありません。1996-1998年の年平均でも世界4位でしたので、日本の研究レベルは急激に下降していると言わざるを得ません。また、単純に論文発表数だけを見ると2018年で日本は世界5位でしたが、2011年以降は下降が続いています。この数字を見る限り、世界と比較した日本の研究レベルは決して良好とは言えません。近年、日本の研究レベルの低下を多くの研究者や学術関係者が訴えてきましたが、ここにきてやっと日本政府も危機的事態を認識し、対策に動き出しました。

10兆円規模の大学ファンド

研究を促進するために研究費は欠かせません。2020年12月、日本政府は日本の大学研究における資金繰りに多大な影響を与える「大学ファンド」の構想を発表しました。それは10兆円規模の大学ファンドを創設し、世界に比肩するレベルの研究開発を目指すというもので(国立研究開発法人科学技術振興機構作成の説明資料)、2021年1月にはこの大学ファンドの創設費用5000億円を含む補正予算が成立しました。これが日本の大学の国際競争力の強化や、博士課程学生などの若手研究者の人材育成、研究施設の整備支援の充実などが進むことが期待されます。

多様化する研究費獲得方法

多くの研究者は、科研費や他の研究助成金などから研究費を得ていますが、近年、研究費の獲得方法も多様化が進んでいます。大学・研究機関の独自の基金、財団や企業からの助成金などが増え、一例ですが公益財団法人 助成財団センターのように助成金情報を発信するサイトもあります。academistのような寄付(クラウドファンディング)による研究費調達という新しい形も登場しているので、選択肢は増えつつあるも受け入れられるようになっていますし、国外の研究機関からの研究助成の情報もウェブサイトで検索できるようになってきています。研究費の獲得方法が多様化するのは、研究の幅を広げることにも役立つでしょう。

国際共同研究

国際的な共同研究に参加することは、高インパクトな学術雑誌(ジャーナル)に、より多くの研究者に引用されるような論文を発表するチャンスを広げます。自分の専門分野に限定せず、分野や国を超えて世界中の研究者と共同研究を行うことで、幅広い研究に関与することも可能です。やり方によっては研究費を持ち寄ることも可能ですし、それぞれの専門分野に応じて作業分担することもできるでしょう。科学技術・学術政策研究所がまとめた「科学技術指標2020」によると世界で国際共著論文が増えており、日本の国際共著論文の割合も年々増加傾向にあります。2018年時点での日本の国際共著率は35.1%と1981年比で約30ポイント増加していますが、それでも米国(45.4%)や英国(69.4%)に比べて低いので、今後も積極的に国際共同研究を推進していくことが望まれます。

大学ファンドが日本の学術研究をどのように後押し、日本の研究レベルが再び世界と肩を並べることにつながるか、今後の動きにも注目です。


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