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【東京大学発ベンチャー】 株式会社ユーグレナ

「ミドリムシで10億人の栄養失調を救い、飛行機が飛ぶ社会に。」

 

豊富な栄養を含む素材として注目を集め、急速な拡大を遂げている「ミドリムシ(学名:ユーグレナ)」市場。食品売り場にはミドリムシ入りのジュースやお菓子など多彩な商品が並び、市場規模は約100億円にのぼる。
そのミドリムシを世界で唯一屋外大量培養できるユーグレナ社は、新たなステージに向けた取り組みを進めている。ヘルスケア事業では、国内での足場を固めるとともに中国・イスラム圏など世界への本格進出を展開。同時に、環境・エネルギー事業ではミドリムシを原料としたバイオ燃料の実用化に向けた研究開発も推進している。
15年12月には、バイオジェット・ディーゼル燃料の実用化計画を発表。2020年にはバイオジェット燃料による飛行機のコマーシャルフライト、バイオディーゼル燃料によるバスの公道走行を目指している。ミドリムシと共に歩んできた出雲社長のこれまでの道のりと目指す未来について伺った。

■世界初、ミドリムシの屋外大量培養に成功
一般の家庭で育った私にとって、学生時代にはベンチャー企業を興すということは選択肢にも入っていませんでした。そんな自分を変えたのが、バングラデシュでの経験です。東京大学在学中にバングラデシュで栄養失調の子供たちに出会い、「これはなんとかしなければ」と考えるようになりました。
そして、同大学農学部に在籍していた鈴木健吾(同社取締役研究開発担当)から研究テーマである「ミドリムシ(学名:ユーグレナ)」を紹介され、その可能性に魅了されました。藻の一種であるミドリムシは体長わずか約0.05mmながら植物と動物両方の性質を持ち、59種類もの栄養素を含んでいます。また、光合成により二酸化炭素を吸収し、バイオ燃料を取り出すことも可能なのです。
当時、ミドリムシ商品を専門に扱っている会社はなく、自分たちでやろうと2005年に起業、同年12月には各大学や企業の協力を経て世界で初めてミドリムシの屋外大量培養に成功しました。

■国内のミドリムシ市場を300億円規模へ
大量培養の成功後、私自身約500社に営業に飛び込みましたが成果が上がらず、2008年に伊藤忠商事からの出資が決まったことが転機となりました。現在では、一人でも多くの方にミドリムシを知っていただくために、大手食品メーカーとの共同開発にて様々な商品を展開しています。同時に12年から自社ブランド「ユーグレナ・ファーム」を立ち上げ、自社製品の強化にも取り組んでいます。立ち上がりは順調で、主力商品である「ユーグレナ・ファームの緑汁」は、定期購入者数が約6万3000人を超えました。現在、ミドリムシ入り商品市場は末端価格で約100億円規模にまで成長しています。私たちは食品や化粧品など商品の形にこだわることなくミドリムシを多くの人に届け、18年には300億円規模への拡大を目指しています。
世界に向けては、14年2月にイスラム圏への輸出が可能となるハラール認証を取得するなど、中国・イスラム圏への市場開拓を進めています。また、同4月からはバングラデシュで約5000人にミドリムシ入りのクッキーを配布していますが、この活動をいずれは100万人に広げ、将来的には10億人の栄養失調の解決に役立つことを目指しています。

■2020年はミドリムシを世界に発信するチャンス
14年6月から、いすゞ自動車との共同研究により、ミドリムシを原料としたバイオディーゼル「DeuSEL®」を利用したシャトルバスの運行を開始しました。また、15年12月にはバイオジェット・ディーゼル燃料の実用化計画について発表しました。
現在、ミドリムシ由来のバイオ燃料研究開発は、マラソンで言う折り返し地点にまで来ています。東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年にはミドリムシでバスが走り、飛行機が飛ぶ社会を実現させ、日本を訪れた外国人に「日本には石油に代わるクリーンエネルギーがある」と各国で口コミしてもらうのが狙いです。
私はこれまでの経験から、大学発ベンチャーが成功する鍵は、大企業との関係性にあると感じています。大企業は、よい技術を持つ大学発ベンチャーと上手く協働すればコストも時間も削減できます。ベンチャー側も大企業とのコラボを構築する能力を磨き、お互いが利益を享受できる関係性を築くことができれば、社会を変えるような商品やサービスが生まれるのです。

【プロフィール】
出雲 充 代表取締役社長
1980年1月17日生まれ。2002年 東京大学農学部農業構造経営学専修 卒業後、東京三菱UFJ銀行 を経て2005年に創業。若手実力派企業家として数々の賞を受賞、15年には日本ベンチャー大賞「内閣総理大臣賞」受賞。

【会社概要】株式会社ユーグレナ
設立年月日/2005年8月9日
本社所在地/東京都港区芝5丁目33番地1号
連絡先/03-3453-4907
事業内容/ユーグレナ等の微細藻類の研究開発・生産 、ユーグレナ等の微細藻類の食品・化粧品の製造、販売 、ユーグレナ等の微細藻類のバイオ燃料技術開発、環境関連技術開発 、バイオテクノロジー関連ビジネスの事業開発・投資等

 

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