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論文執筆で泣かないために―英語表記の注意

研究者にとって自分の論文が学術雑誌(ジャーナル)に掲載・出版されることは、意義があるだけでなく、自信につながることです。だからこそ、せっかく書いた論文が、英語表記の間違いで却下(リジェクト)されるのは避けたいところです。今回は、リジェクトされないために注意すべき、よくある英語表記の間違いをご紹介します。

はじめに、論文を執筆する際の注意点を確認しておきましょう。以下の3点はいずれも怠るとリジェクトにつながりかねない重要事項です。

・不適切な文献選び
研究者の中には、論文作成においてとても大切な文献選びに無頓着な人がいます。原稿を執筆する際には、先行研究や既存知識についてしっかりと調べて考察することが不可欠であり、その際に、古い、いわば鮮度の落ちた文献を引用した論文は、容赦なくリジェクトされかねません。

・研究に適した方法論の採用
研究を行うにあたり、しっかりとした研究方法が明示され、それをふまえた分析が行われることが必須です。データ分析が複雑になればなるほど、間違いのリスクも高まりますが、不適切なデータは原稿の信頼性を損ねるので注意が必要です。


・盗用・剽窃
盗用・剽窃は、学術界において非常に問題視されている不正行為です。既存の文献を逐語的にコピー&ペーストしたような文章が含まれている場合は盗用・剽窃とみなされます。盗用・剽窃と判断された場合、該当の原稿は即リジェクトされるのがほとんどです。どのような場合に盗用・剽窃となるのかをしっかり理解しておきましょう。

では次に、よくある英語表記の間違いを説明します。

英語表記の間違い

 

スペルミス

スペルミスのある原稿は、印象がよくないものです。場合によっては、そのスペルミスのせいで文章の意味そのものが変わってきてしまうこともあるので要注意です。しっかり校正をして、ミスを防ぎましょう。

コロン

ある事柄を列挙する場合は、コロンで文を区切ってから、その後に続ける形で記します。

(誤)I had to purchase the following books from the bookstore, English, Mathematics and Physics textbooks.
(正)I had to purchase the following books from the bookstore: English, Mathematics and Physics textbooks.

ただし、コロンの前の文が、コロンの後の文なしでは文として完結しないような場合、コロンを使うことはできません。

(誤)Her favourite colors are: red, black and white.
(正)Her favourite colors are red, black and white.

セミコロン

関連性の高い2つの文章を区切るときは、セミコロンを使います。

(誤)The frog is green, it is also bumpy.
(正)The frog is green; it is also bumpy.

(誤)の文のように、完結した二つの文をコンマでつなぐのは不適切です。この場合はピリオドで区切ることもできますが、セミコロンを使うことをお勧めします。

コンマ

コンマの位置を間違えたり、コンマをつけ忘れてしまうと、文の意味が変わってしまったり、わかりづらくなることがあります。またtherefore、however、nonethelessといった接続副詞のあとにはコンマをつけます。

(誤)Nonetheless I had to go to the hospital.
(正)Nonetheless, I had to go to the hospital.

さらに、コンマは, i.e., e.g., というように省略形の後にも使われます。多くのスタイルガイドには、こうした短縮形の後にコンマを使うよう書かれています。

アポストロフィ

アポストロフィは、dog’s(単数名詞の場合はアポストロフィ+s)や writers’(sで終わる複数名詞の場合は単にアポストロフィをつける)のように所有を表すほか、we’re(we are)やyou’ll (you will)のように短縮形に使われます。yoursやhersのようないわゆる所有代名詞にはアポストロフィは使いません。

(誤)It’s all your’s.
(正)It’s all yours.

it’sとitsについては、注意が必要です。it’sは、it isまたは it hasの短縮形であり、所有を表すのは、アポストロフィのないitsとなります。

(誤)The dog found it’s bone.
(正)The dog found its bone.

itの所有格はit’sではなくits となることに注意しましょう。

クォーテーション(引用符)におけるピリオドの位置

引用符におけるピリオドの位置は、アメリカ英語とイギリス英語で異なります。アメリカ英語では、引用符の内側にピリオド(その他の句読点も同じです)を記します。一方、イギリス英語では、引用符の外側にピリオドを記します。投稿先のガイドラインにピリオドの位置についての指示があれば、それに従いましょう。

(アメリカ英語):He said, “They were coming this way.”
(イギリス英語):He said, “They were coming this way”.

感嘆符の多用

感嘆符を使いすぎると、文章のインパクトが薄れて本当に強調したい部分がわからなくなってしまいます。多すぎる感嘆符に読者がうんざりして、要点が伝わらない、ということのないように気をつけましょう。

ハイフン、エヌダッシュ(enダッシュ)、エムダッシュ(emダッシュ)

ダッシュ(またはダーシ)とは横棒状の記号のことで、ハイフンやenダッシュ(短)、emダッシュ(長)は一見同じように見えますが、横幅の長さと使い方が違います。横幅の長さは、ハイフン、enダッシュ、emダッシュの順に長くなります。ハイフンは、the 10-year-old kidのような複合形容詞に使われます。enダッシュとemダッシュの使い方の違いは以下のとおりです。

enダッシュ: This chapter extends from page numbers 10–25.
emダッシュ: The people —who did not attend the meeting—could only escape the fire.

enダッシュは、数値的な範囲や区間を表す場合によく使われます。
emダッシュは、文の途中に補足的な説明を挿入するときなどに使われます。

長すぎる文

句読点などを使わずにいくつもの要素を盛り込んだ長すぎる文は、わかりづらいものです。1つの文にあれもこれもと情報を詰め込みすぎるのは好ましくありません。短い文で簡潔に表現することを心がけましょう。

(誤): The early morning sun flashed golden rays of sunlight on the ocean, and the wild beasts devoured the green shrubs as singing birds soared in the air what a remarkable sight on a summer morning!
(正):The early morning sun flashed golden rays of sunlight on the ocean. Wild beasts devoured the green shrubs as birds sang and soared in the air. What a remarkable sight on a summer morning!

論文の執筆は、骨の折れる作業ですが、やりがいのあるものです。しっかりと校正作業をして英語の間違いをなくすこと、盗用・剽窃の疑いをかけられないように何度も慎重にチェックをすること、こういった地道な努力が、リジェクトを防ぐことにつながります。あせらず、校正を怠らずによい論文を仕上げてください。

 


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