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第7回 色覚バリアフリーのスライド・3つのポイント

国際学会でのプレゼンを成功させるには、聞き手を引きこむ英語スピーチに加え、見やすいスライド作りも重要な鍵となります。より多くの人に伝わりやすく・わかりやすい色覚 バリアフリー なスライドを作るために覚えておきたい「カラーユニバーサルデザイン」について迫る連載シリーズです。


忙しくて余裕がない?―ポイントさえおさえれば、CUDはすぐに実践できます! CUDO副理事長の伊賀公一氏に、PowerPointなどを用いたプレゼンテーションでこれだけは実践してほしいこと3つを伺いました。

      1. 赤色のレーザーポインターを使わない
    1. 図7-1 緑色のレーザーポインターの例(CUDOおよびハート出版より許可を得て転載)

 

「赤色」はP型、D型の人には目立つ色ではありません。赤いレーザーポインターの光は長波長の光を使用しているために、特にP型の人には“赤外線”になってしまい、見えにくいか全く見えません。そこで、2000年代になって、P型、D型の人にも見えやすい緑色のレーザーポインターが開発されました(図7-1)。緑色のレーザーポインターは、開発当初、種類が少なく高価なものでしたが、現在では種類が増えて入手しやすくなっていますので、買い替えの際には是非導入を検討しましょう。なぜなら、緑色のレーザーポインターの光はC型の人にとっても赤色より明るく見やすいのです。

    最近は、PowerPointなどのアニメーション機能を用いてスライドの特定箇所を強調する方法もあるため、レーザーポインターを使わない人も増えています。それも赤色のレーザーポインターの使用を避ける方法の1つと言えます。

 

    1. 赤色の代わりにオレンジ色(朱赤)を使う

一般型のC型色覚者は「赤色」を目立つ色と考えていますので、重要な部分や強調したい内容に赤色を用いることが非常に多いです。しかし、特にP型の色覚者にとって、赤は目立たない色です。そこで、同じ赤色でも波長がより短いオレンジ色(朱色)寄りの色にすると認識されやすくなります。
Microsoft Officeの標準色の赤は、3原色を用いたRGBの色表現では(R:255, G:0, B:0)という値になっています。デザインに凝る人であれば、色の設定の「ユーザー設定」機能で色を選ぶ場合があるでしょう。色弱の人にも見やすい赤色として推奨されているのは、具体的には(R:255, G:40, B:0)の色です。緑(G)に40が加わると、見えやすくなります(図7-2)。

図7-2. 赤色の代わりに推奨されるオレンジ色(朱赤)のRGB指定値[右図に示す通り R: 255, G: 40, B: 0]

一度このオレンジ色(朱赤)を作ったら、「CUDカラー」などテーマを名付けてカラーパレットに保存することをお勧めします。PowerPointなら[テーマ]タブ内の[配色]から、ExcelおよびWordなら[ホーム]タブ内の[配色]から[新しい配色パターンの作成]を選んで追加します。
CUDO認証マークに用いられている赤色を見れば、色弱の人にも見えやすいオレンジ色(朱赤)のイメージがつかめます(図7-3)。赤色を使いたいとき、是非、少しオレンジ色寄りにしましょう!
色を変えることができない場合、バックが濃い色なら白いフチドリをつけることも有効です。

図7-3 見えやすいオレンジ色(朱赤)(左下の丸):CUD認証マーク(CUDOより許可を得て転載)

 

  • 色の名前だけで情報を指し示さない

「緑色の部分が○○です」「グラフの赤線で示している通り・・」などのように、色の名前でスライド上の情報を指し示すと、P型、D型色覚者にはどこを指しているかわからない場合が多くあります。それを解決するにはどのような方法があるでしょうか。
まず1つは、「この緑色の部分が○○です」と言いながらポインターなどのツールでもその部分を指し示したり、「緑色の小さな丸の部分が○○です」などと、色以外の情報も加えて言うことです。もう1つは、最初から多様な色覚の人々に情報を伝えることを想定して、色のみに頼らない表現方法でスライドを作成することです。CUDに配慮したグラフの作り方については第9回で紹介します。


参考資料:
岡部正隆、伊藤啓(2005)医学生物学者向き 色盲の人にもわかるバリアフリープレゼンテーション法
カラーユニバーサルデザイン機構(2009)『カラーユニバーサルデザイン』ハート出版
伊藤啓(2012)カラーユニバーサルデザイン 色覚バリアフリーを目指して. 情報管理 55(5)307-317

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