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論文の謝辞の書き方

謝辞(Acknowledgements)は、学術論文において重要な役割を担う、不可欠な構成要素です。 謝辞 では、すべての貢献者に対して感謝を述べるとともに、当該論文に携わった人、組織・機関などの貢献に対する評価を記します。ここでは、謝辞の書き方を見てみましょう。

謝辞は誰に対して書くか

データの作成なども含め、直接的に研究に携わった人は著者に含まれますが、研究の支援者や機関など、それ以外にも論文に携わる人はたくさんいます。そこで著者は、論文内に謝辞という項目を加え、彼らに感謝の意を示すのです。謝辞を見れば、部分的であれ研究に貢献した人などを特定することもできます。
謝辞で対象とするのは、著者、著者に該当しないながら研究に貢献した人、資金提供者、編集者、さらには事務職員までをも含みます。学術論文では、謝辞に記載する情報は簡潔にすべきであり、研究に直接関係する人、機関などへの言及にとどめます。

著者

貢献者に謝辞を述べることは大切ですが、最初に著者と貢献者を区別しておく必要があります。医学雑誌編集者国際委員会(International Committee of Medical Journal Editors, ICMJE)は、著者資格の基準として満たすべき4項目を挙げています。
① 研究の構想もしくはデザインについて、または研究データの入手、分析に貢献した人
② 原稿の起草または重要な知的内容に関わる批判的な推敲に関与した人
③ 出版原稿の最終承認をする人
④ 研究の正確性について説明責任があることに同意した人

この4項目を満たす著者とその属性は、論文の最初に記載されます。学術雑誌(ジャーナル)の編集者と連絡を取り合う役割を担う連絡責任著者(corresponding author)であれば、2度名前が記載されることになります。一方、上の4項目すべてを満たさない貢献者(contributor)は著者として記されないので、謝辞に名前が列挙され、それぞれの貢献内容の詳細が記載されるのが一般的です。

最近では多くの学術雑誌が、謝辞の部分で、各著者の役割を記載するよう依頼してきます。著者の貢献についての典型的な記載例を示します(同姓の研究者がいない限り、ラストネームのみが使用されます)。

データ分析を行い、図表を作成してくれたスミス、GIS(Geographic Information System、地理情報システム)トラッキングにつき技術的な助言をくれたジョーンズ、ならびに事実を見直し、原稿の編集を行ってくれたジョンソンに感謝の意を表します。

 

このように記すことで、読者は該当研究における各人の役割を把握することができるようになります。

著者以外の貢献者

研究には著者以外にも、貴重な貢献をした多くの人々が関わっています。例えば、研究資金を集める人や、実験室でスタッフを監督する人などです。他にも、文章の作成あるいは原稿の見直し、文法および構文の校正などを担う人もいます。これらの人々に対する感謝は、謝辞に記載すべきです。

文章作成支援、編集、校正などの作業についての謝辞も書き記す必要があります。そのため、校正会社がICMJEのガイドラインに従って原稿の校正作業を請け負った場合にも、論文の謝辞に正式に記載されなければなりません。

 

例えばエナゴのような校正会社が有料で英文校正を行ったとしても、論文執筆に貢献したとして謝辞に記載される必要があるのです。また、投稿論文の場合には、査読者(レビューアー)に対する謝意を示すこともあります。研究助成金などによっては、研究資金提供者を謝辞に明記することを義務付けているものもあるので、注意してください。

謝辞の書式

論文の本体とは異なり、謝辞の記載は、より主観的な文章になってもかまいません。I,my,meなどの人称代名詞を使用することも許されます。例を示します。

専門知識をもとにあらゆる局面で研究を支え、原稿作成でも協力してくれたことに対し、私はここに記述した方々に心から感謝します。

 

書式については、学術出版社や学会、大学などで論文執筆用のガイドラインを提供しているので、それらを参照しましょう。多くのガイドラインで、謝辞への記載とは別に資金提供者をリストアップしなければならないとしていることがあるので、注意が必要です。資金提供者自体が、固有のガイドラインを用意していることもあります。その場合は、指定されたガイドラインに必ず従うようにしてください。

この時に固有名詞(研究者の名前、所属、肩書きや機関名)を間違えないようにしましょう。指定された書式がある場合には、それに準じつつ、謝辞を述べるべき人をもれなく適切な順番で記載し、感謝の気持ちが伝わるように記載することが大切なのです。


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